Episode No.818(20010410):リーダーの知恵
私の商売人としての座右の銘に・・・
「経営者は名より実をとれ」というのがある。
座右の銘・・・と言うわりには、誰が言った言葉が忘れちゃったけど。
でも、その精神はいつ何時も忘れないつもりだ。
私が尊敬する阪急の創始者、小林一三は・・・
経営の実権を握って、采配をふるいながらも商売の成功を第一に考えて
会社が社会に認知されるまでは名のある人を社長に据えて、ずっと専務を通していた。
「名」は魔物である場合が多い。
「名」はあっても「実」がともなっていないような人は大勢いる。
しかし本当に「実」があれば・・・「名」は自然に浮かび上がってくるモノだ。
小林一三も最後は敏腕を買われ、戦後の復興大臣までなったし、ね。
「名より実をとる」と聞くと、何だかズル賢いような気もしないではない。
でも、極端な話・・・
たとえ偽善であってもキレイ言だけ並べているより世の中の役に立っている人も少なくないし
そこまでいければ、もう偽善とは言えない。
むしろ、キレイ言だけ並べている方が、よほど偽善に思えてしまう場合もある。
よく「気持ちだけですが・・・」なんて言って物を渡すことがあるけど
物を渡すという行動があったから、相手にわかってもらえることはある。
渡したモノは何であれ、ね。
リスクや責任を負わない人に・・・「実」はとれない。
何でも一番苦労した人が、一番大きな喜びをつかむことができる。
では、責任を負うとは、いったいどんなことだろう?
組織のリーダーにとって大切なのは・・・
自分の責任を負うことではなく、実は他人の責任を負うことじゃないかな。
「発想を持った人を見抜き、動かすこと。
契約書や仕様書どおりでは満足できぬ人をひきつけ、引っ張って行くこと。
それこそがリーダーの仕事だ」
・・・と言ったのはソニー創始者、井深 大。
責任感は人一倍ある人の中にも・・・実は他人の責任まで負える人は少ない。
むしろ個人の責任を負うのは、大人として生きていくために当たり前のことだ。
他人の責任まで負えるだけの力量があるかどうかでリーダーの器は決まる。
組織の大小にかかわりなく・・・たとえば子供の責任を親がとれるかどうかという点でも、ね。
責任をとることの重要性を知れば知るほど・・・
責任のあることを他人にまかせられなくなるというのが現実だ。
だから、ワンマン社長の会社は、なかなか大きくなれない。
ソニーが小さなベンチャー企業のひとつから世界に羽ばたけたのは・・・
井深 大のような考えを実践できたリーダーがいたからに違いない。
ひとりでもやる強い意志は重要だけど・・・
ひとりでやれることは・・・あまりに小さい。
他人にませる力量、これを確実にするためには・・・失敗させないための知恵がいる。
そこで私はこう思う。
リーダーは気を遣う以上に・・・頭を使う必要がある。
他人への気遣いは「ここまででいい」という限りはない・・・でも、1日は24時間。
抱えている問題を解決させるために・・・
気を遣っているだけでは、時間がいくらあっても足りないし・・・
ともすると、それは言い訳にとられてしまうことさえある。
気を遣わなくても済むように事前に何をできるかが・・・つまり、知恵の見せ所。
リードしていくべき道を決められなければ・・・リーダーとは呼べない、でしょ?