Episode No.2543(20061016)
一本のろうそく

「暗闇を不安に思うより、
 一本のろうそくに火を灯しなさい」

これは、アメリカのルーズベルト元大統領夫人、
エリノア・ルーズベルト(1884〜1962)の言葉だ。

大統領の他界後は国連アメリカ代表も務めた
ファーストレディー中のファーストレディー。
亡くなって40年以上経つが、
今なお、その生き方や遺した言葉は
人々に高い感銘を与え続けている。

高尚な哲学から
いきなり泥臭い商売の話になるけど・・・
実は商売においても、
この言葉の意味するところには大きな共通点がある。

商売がうまくいかなくなった時、どうするか?

例えばお店を構えた客商売の場合・・・

近所のライバル店に対抗して値段を下げる。
・・・これは一時的に客の目を引くことにはなるが、
結局、値下げ合戦を開始することになってしまい、
最悪の場合、共倒れまで泥仕合が続くことになりかねない。

客は値段が高いから来ないのか?
・・・と言えば、決してそうではない。

納得できるサービスが得られれば、
高くても客は集まる

安さが売りで繁盛している店は、
スーパードラッグストアのように、
どこでも同じ商品を売っているから
少しでも安いと客が集まるのであって・・・
個性や付加価値を売る店
安さのアピールをしてしまうと、
お得感よりも安っぽさが印象に残ってしまうことの方が怖い。

ひと度安っぽいと思われると、
かえって客足は遠のいてしまうものだ。

商売の世界には、こんな意味合いの言葉がある。

「大勢の客を作ることより、
 たった一人でもいいから熱烈なファンを持つことが
 商売を長く続ける秘訣である」

熱烈なファンというのは、
その店の本当の良さを理解してくれている客のことだ。

個性や付加価値を理解してくれる人がいれば、
必ずそれは別な人に伝えられていく。

例えは悪いが・・・
山火事だって
最初は1本のろうそく程度の炎が元なんだから。

大企業がやるようなメディアミックスによる広告作戦は、
いわば暗闇を一瞬のうちに日中の明るさにする
照明弾をブチ込むような行為。

そんな巨大な軍隊なように真似は、
とてもできなくても・・・
ろうそくの明かりだって、本は読めるんだ。

むろん・・・
そのろうそくが燃え尽きる前に、
次の火種を探し続ける努力は必要だけど、ね。


参考文献:グレイト・ウーマン/20世紀を勇気づけた言葉
ペギー・アンダーソン=編 ディスカヴァー21=訳