Episode No.1322(20021119):人の上に立つ商売

映画好きが高じて、
かつてエキストラのバイトをしたり
監督の舞台挨拶があると聞きつけると
狭い名画座の入口に並んだりした私が・・・
今まで直に会話を交わしたことのある映画監督が3人いる。

今村昌平監督、大林宣彦監督、そして故・神代辰巳監督。

いずれも一言、二言程度の話だし
こっちは緊張してガチガチになっていたから
とても会話をしたと言えるかどうか怪しいが
偶然、同じレストランに居合わせた山田洋次監督とは違い
確かに面と向かって会話をしたのは事実だ。

いずれも巨匠と名高い監督だけど
さすがに"人をまとめるのが商売"たけあって
決して偉ぶったところがなく
自然に接してくれた、という印象が強い。

映画監督の中でも
とくに子役を生き生きと
うまく演出することができる人は
名人とも言われるが・・・

「E.T」、「太陽の帝国」、「インディジョーンズ/魔宮の伝説」、
ジュラシック・パーク」、「A.I」・・・などで
子役を使いこなす名人ぶりを発揮した人といえば
誰でも知ってるスティーブン・スピルバーグ監督。

そのスピルバーグ監督のドキュメンタリーを見ていたら
なるほど、と思うようなことを言っていた。

「私は子役を子供として扱わない。
 大人と同じように人間として扱うんだ」

大人が子供の視点にもなれるというのは
一種の才能であるとは思うが・・・
その才能は言い換えると
目の前の相手に対して決して偏見を持たない
と、いうことなんだろうと思う。

大人になるまで生きてくると
嫌でも経験や知識がインプットされる。
それは、うまく使えば有意義だが
無意識のうちに大きな弊害になっていることも多い。

その弊害をふりかざして
自分は大人だと主張しているような人は
決して自分の世界を広げることはできない。

初めて出逢った他人と
自然に接することができるくらいの人格者でなければ
とても人の上に立つことはできないだろう。

ちなみにスビルバーグ監督は
アカデミー賞受賞作「シンドラーのリスト」について
こんなことをコメントしていた。

「この企画は10年あたためた。
 なぜ10年あたためる必要があったかといえば
 もっと自分自身が人格者にならなければ
 とても作れないと強く感じていたんだ」


参考資料:DVD「ザ・ディレクターズ/スティーブン・スピルバーグ」販売元=東北新社