Episode No.880(20010621):喜びのタネをまけるか?

「決して倒れないのがよいのではない。
 倒れてもすぐ起きあがれるのが貴いのだ」

作家、吉川英治の言葉だ。

この間、強さと弱さについて、いろいろ考えてみたけれど
やはりポキンといかない方が強いような気がする。

格闘技なんか見ていても・・・
倒れないモノは、一見強そうに見えて
実は自分以上の敵に会ったことがないだけの話・・・なのかも知れない。

もちろん、ルール上、あんまり何度も倒れてしまったら、その時点で負け。
厳密に言えば、立ち方にもコツがあるんだろうね。

足場の悪いところで何度も立ったり転んだりしていたのでは、これも脳はない。
同じ相手じゃなくて・・・
つねに自分より強い相手と向かって倒れ、また立つことができたら
絶対に強くなれると思う。

「地位や財産を失っても立ち直れる。
 だが、勇気を失ったら万事窮す」

と言ったのは・・・
自分が経営していた洗剤販売会社を外資系企業に乗っ取られた後、
ダスキンを創業し、ミスタードーナツでも成功をおさめた鈴木誠一。

ところで・・・
今、ダスキンが会社のキャッチフレーズに使っているのはこんな言葉だ。

「喜びのタネをまこう」

商売においても人間関係においても・・・基本はこれだ、と思う。
そこには優しさや愛、そして"まく"という言葉には強さもあらわされている。

耳の悪いエジソンが、ベルよりもっと良く聞こえる電話を発明したのも・・・
本田宗一郎が買い出しに行く女房のために自転車にエンジンをつけたのも・・・
その前提にあったのは、プロの腕よりも先に誰かを思う気持ちだ。

他人を喜ばせることに自分の喜びを見いだせないような人では・・・
何をやっても成功しない、と多くの先人たちは教えてくれている。

よく漫才などは・・・
「笑われてはダメ、笑わせないと」なんて言うけど
それになぞって言えば
「喜んでいるだけじゃダメ、喜ばせないと」って感じだね。

技術は大切だけど、結局、技術を裏付けているのは人間性

だから、技術を条件に結ばれた仕事関係の人たちよりも
一番身近な家族や友達を喜ばせることができないようでは・・・
何をやっても長続きしない。

技術だけでは、倒れてしまうし
技術だけでは、立ち上がれない・・・ってことだろうな。

本当の信頼は・・・人間性が作っていくものだし
信頼関係を築ける人なら・・・立ち上がるチャンスはいくらでもある。

自分が本気でやっていないことや・・・
見せかけだけでやっていることに・・・
他人は本気で心を動かしてはくれないから、ね。

そういう意味では、人間って結構、敏感な生き物だと思うな。


参考資料:「メゲそうになる心を支える言葉」赤根祥一=編著 日本実業出版社=刊