Episode No.023
「ねぇ、この発明が完成したら、ぜひあなたの名前をつけなさいよ」
技術屋の女房は、そう言って失敗を繰り返すダンナを励ました。
数多い人類の発明品の中でも、さまざまな動力源として使われているエンジンは人類に格段の進歩をもたらした。
そのエンジンをもっともっと効率的なものにしたいというのが、男の願いだ。
効率を上げるひとつの手段として男が選んだのは、燃料をもっとコストの安いものに変えること。
なおかつ力強い動力として働くものでなければ意味はない。
こうして1897年、男は幾度もの失敗を乗り越え、それまでのエンジンの常識をくつがえす画期的な発明に成功する。
「ねぇ、この発明が完成したら、ぜひあなたの名前をつけなさいよ」
女房の言葉にニッコリ笑って答えたドイツ人技術者。
彼の名は、ルドルフ・ディーゼル。 |