Episode No.826(20010419):10倍の哲学

昨日はちょっとだけおカタイ哲学の話だったんで・・・
今日はやわらかい、と言うかもっとわかりやすい哲学の話でもしてみよう。

タイトルの「10倍の哲学」。
これを実践して人の心をつかみ、一時期、日本を牛耳った男は・・・
最近、ニュースで話題の人の亡き父・・・田中角栄だ。

では「10倍の哲学」とは何か?

こんなエピソードがある。
周知の通り、政治家になる前は若き土建屋の社長だった角栄は・・・
当時、会社の顧問をしていた代議士から選挙資金の調達について相談された。

代議士もよほど金に困っていたのだろう。
いかに自分が顧問を引き受けているとは言え、相手はまだ27歳の青年社長。
現在の貨幣価値にして、せいぜい1千万でも出してくれれば御の字。
だけど、実際には何百万がいいところだろう・・・そんな風に思っていたに違いない。

ところが、青年社長・田中角栄は、こと言「わかりました」と言って
後日、黙って金を差し出した・・・その金額は現在の貨幣価値でなんと15億円だったという。

これにはさすがの代議士先生も驚いて・・・
次の選挙で田中を党公認候補にすることになる。
政治家・田中角栄は、こうして生まれた。

似たような話は、浪曲の「石松と身請山鎌太郎」という話にもある。
石松が"田舎ヤクザ"と内心バカにしていた鎌太郎が・・・
次郎長親分のカミさんの香典にと百両渡されてビックリする話。
結局、この金が元で石松は都鳥一家に殺されちゃうんだけどね。

この話だけ聞くと
「なんだ、やっぱり金がすべてか」なんて思ってしまう人もいるかも知れないが・・・
大切なのは、ソコじゃない。

相手の期待をいかに超える答えが出せるか、という部分が重要。
相手の望みの10倍を返すから・・・つまり「10倍の哲学」というワケ。

相手の期待に応えて動くのが仕事。
でも、金をもらう以上、相手が望んだことをするのは当たり前で・・・
できなきゃ、そりゃ詐欺だ。

相手が望んだ以上の結果を返すことによって、ようやく続いていくのが・・・仕事。

「あの人に頼めば、期待以上のことをしてくれる」
そう思ってくれるお客が何人いるかで「仕事のできる人」かどうかが決まる。

たとえ、期待通りのモノを返すにしても・・・
約束より1日でも早く受け取れたら、相手にしてみりゃ期待と感じてくれるはず。

期待というのは放っておくとふくらんでしまうモノだから・・・
期限を延ばせば延ばすほど、完璧さが要求されてしまう。

期待に応える自信がない時には、せめて早く返すことだ。
・・・わかっちゃいるけど、私もなかなか実践できてなくて時々文句言われたりする。

ただ、私はメールをもらったら・・・もらったメールより長い返事を書くよ。
迷惑かも知れないけど、ね。
せっかくのチャンスだから。

結局「10倍の哲学」って・・・チャンスを活かすための哲学なのかもね。
チャンスは誰にでもあるけれど・・・
それを活かすためには力がいるよ、やっぱり。ゥキ


参考資料:「田中角栄の知恵を盗め!」小林吉弥+プロジェクトK=著 主婦の友社=刊 ほか