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Episode No.093:無理が通れば道理が怒る

赤穂浪士が主君、浅野内匠頭の仇討ちで、吉良邸へ討ち入りしてから、今日でちょうど296年目となる。

世に仇討ちの話は数々あるが、歴史に語られる仇討ち話は、大抵やられる方が悪者。みごと仇討ちが成功し、最期に"正義は勝つ"・・・という締めくくりになっている。
しかし、赤穂浪士に首を取られた吉良上野介にしても、地元では名士として語り継がれていたりする。

結局、仇討ち話の大半が、大衆のための勧善懲悪ドラマとして語られてきた・・・ということだろう。

清水一家の名物男、森の石松の仇討ちを次郎長がする話も浪曲で語られているものなので歴史的な真偽のほどは、よくわからない。だが、そのベースとなる話は実際にあったようだ。

ある親分から次郎長親分宛に預かった大金を持って帰る旅の途中、石松は、その金を騙し取られたあげく殺されてしまった。

殺した相手は都鳥一家とわかっていたが、清水一家は石松の喪に服するために、すぐに仇討ちには出なかった。

そんなある日、清水一家の若衆が素人料理で作ったフグを食べ、死者まで出す騒ぎを起こす。
その噂に尾ひれがついて、今、次郎長はフグの毒にあたって虫の息だという話が都鳥一家の耳にも入った。
もちろん、それは単なる噂。当の次郎長はピンピンしている。

都鳥一家は、石松を殺して以来、いつ豪傑ぞろいの清水一家が仕返しにくるかと、気が気ではない毎日を送っていた。
そこへ、このフグの噂。いかに次郎長が強いと言っても虫の息なら怖くない。やるなら今だ・・・と、清水へ向かう。

結局、都鳥一家は清水の宿へ着いたところを事前に情報をキャッチした次郎長ほか石松の兄弟分たちにメッタ斬りにされて一巻の終わり・・・という話。

人間、最初にやましいことをしてしまうと、それを補うために、さらにやましい方向へと進みやすいもの。
そして、気がつけば、やってることは無理矛盾だらけ。その結末は良くなるはずもない。

長銀の次は、日債銀か・・・。


参考資料:「二代 広沢虎造」日本の伝統芸能シリーズ・浪曲 テイチク

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