日本を舞台にしたハリウッド映画と言えば、
まず頭に浮かぶのが…「ブラックレイン」かな。
マニアックなところでは「MISHIMA」。
トム・クルーズの「ラストサムライ」は
設定は日本だけど、撮影したのは確かオーストラリア。
ちょっと空気が違う。映画には空気が写るからね。
実はこの間、下田に行った時に、
唐人お吉の墓参りをしたんだ。
宝福寺のみやげ物売り場に
1枚のDVDが売られていた。
タイトルは「黒船」。
1958年に作られたとあるから、
もう54年も前の作品だ。
主演は何と…
あのミスター・アメリカと言われた
「駅馬車」で知られるジョン・ウェイン。
正真正銘のハリウッド映画なのだ。
買って帰って、観たよ。
カラー作品でまぎれも無く下田で撮影されている。
そのエキストラの多さ、
金のかけ方に正直ビックリした。
ジョン・ウェイン扮する
若すぎるタウンゼント・ハリスは、
異国の心を開いたヒーローとして描かれている。
お吉は写真に残るお吉とは似ていない、
アメリカ人好みの東洋美人。
唯一、知っていた俳優は奉行役の山村 聡。
英語をつかう雰囲気は、
「ブラックレイン」の高倉 健のようだった。
通訳をしている武士役の厳つい顔をした役者は、
英語の発音はいいが、日本語の発音が妙だった。
さて、こんな大作映画が、
何故、埋もれてしまっているのか
実に不思議な感じもしたけれど…
最後まで観てみると、
なるほど日本人に訴えかけてこないことに気づく。
英雄ハリスが帰国し、
涙にくれる元スパイのお吉。
…そこで映画は終わる。
その後のお吉の
悲劇的な人生など何も語られていない。
あくまでもアメリカ目線の日本開国秘話なのだ。
最も「忠臣蔵」だって、
吉良上野介の地元に行けば、
上野介はいい者らしいし…
「次郎長伝」だって、
ライバル黒駒勝蔵の地元に行けば、
広澤虎造の名調子も今ひとつウケなかったというから、
その客が観たいもの、聴きたい話を伝える
…というのが、喜ばれるための条件。
結果として…
決して本当の話ではなく、
都合のいい話が残るだけなんだろうな。