Episode No.652(20000928):懐かしい景色は何処
寅さんの山田洋次監督と・・・
少し前に話題になった『梟の城』を撮った篠田正浩監督が教育テレビに出てた。
今週の月曜日の夜・・・だったかな? 見た?
松竹大船撮影所の思い出話とか、日本映画に限らず、映画界が抱える問題について話してた。
篠田監督って山田監督の先輩なんだってね。
見た目は若々しくて、山田監督の方が上に見えないコトもないけど・・・。
何せ、松竹における山田監督は・・・
相撲界を一時期、ひとりで背負っていた千代の富士と同じような状態だから・・・
苦労も多いんだろうなぁ。
ちなみに脳梗塞から復帰して『御法度』を撮った大島渚監督は、山田監督と同期だって。
映画好き・・・ことに日本映画が好きな私には、いろいろ興味深い話も多かった。
中でも印象的だったのは・・・松竹とやや遅れて発足したP.C.L、現・東宝の違いについて。
松竹大船撮影所を仕切っていた伝説の所長、城戸四郎は・・・
映画づくりの手本をヨーロッパに求めた。
一方、東宝が視察したのはハリウッド。
ヨーロッパ映画とハリウッド映画の決定的な違いは・・・誰が一番偉いのか? というコトだ。
ヨーロッパの伝統的な映画づくりにおいて、一番偉いのは「監督」。
企画も脚本も、もちろん演出も「監督」がやる。
だから出来上がった作品は100%「監督」のモノだ。
松竹出身の監督たちは、もちろん脚本も書く。
でも、ほかの映画会社で育った映画監督・・・すべてにできるコトではないらしい。
ハリウッドで一番偉いのは「監督」ではなく「プロデューサー」。
「プロデューサー」が企画を立て、資金を調達し、役者だけでなく、監督も選ぶ。
どちらがいい悪いというコトは一概には言えないが・・・
その結果、ヨーロッパの映画は芸術性は高いが儲からず、ハリウッドはその逆の傾向にある。
日本には、その両方の流れがあるはずだが・・・
どっちつかずでいるうちに外国映画に駆逐されつつあるというのが現状だろう。
篠田監督が言うには・・・
「ハリウッドが求める娯楽性を日本はゲームやアニメで世界に発信している。
ただ、映画はどうかというコトになるとちょっと・・・」
山田監督は・・・
「方向性を見失っているのはハリウッドも同じ。
私も元気なうちに、まだやっておかなければならないコトはある」
番組の途中、司会をしていたNHKのアナウンサーが山田監督に向かって
「日本人にこだわりつづけている山田監督としては・・・」
と話をふると、山田監督はその言葉をさえぎるように口をはさんだ。
「別にこだわってるワケじゃなくて・・・日本人ですからねぇ」
そう・・・どんなに頑張ったって、西洋人にはなれないんだよ、ね。