Episode No.281(990721):変わり続ける宿命 あなたのまわりには「こいつは優秀だ」と思える人は何人くらいいるだろう? 「唐人お吉」で知られるアメリカの初代総領事、タウンゼント・ハリスが下田港に着任したのは、今から143年前の今日、7月21日のこと。 黒船で日本に開国を迫ったペリーも、そしてこのハリスも日本人に対して、ある程度の敬意をはらっていたことが当時の文献からうかがえる。 ハリスの日記には「日本人の風采と儀容にたいへん感服した。喜望峰より東の国の中で、日本人は最も優秀な国民であると確信する」と記されている。 発表を前提としていない日記の中の言葉だけに、単なるお世辞とは思えない。 ただし、この時のペリーやハリスの感想は「発展途上国としては」ということが前提にあり、しかも「優秀さの基準」は、あくまでも自分たちの言うことをどれくらい理解できるか、自分たちにどれくらい近いか・・・ということであったと考えられる。 年輩の人が、若い者をみて「優秀だ」と思う場合には、概して「若いわりには」という言葉がつく。 年齢のわりに、おちついていたり、モノをよく知っていたり・・・という具合だ。 同輩同士の場合に「こいつは優秀だ」と思える時というのは、たいていその人間が自分にない力を持っている場合が多いだろう。 そういう意味で当時、ペリーやハリスの日本人に対する目は、いかに感服していたとはいえ、決して同レベルからは見ていなかっただろう。 もちろん、まったく同等であれば、日本を開国へリードすることはできなかったであろうが・・・。 知り合い同士の間に何の利害関係もない若いうちは「気が合う」というだけで充分につきあっていけるが、仕事を通してとなると、なかなかそうはいかない。 だが、同じ若い時期にあっても、ある日突然、昨日までいっしょにいるだけで楽しかった仲間がつまらなく感じるようになることがある。 直接的な利害があろうがなかろうが、そもそも集団というのは、個々の役割が決まっているもの。 言いかえれば、お互いにないものをおぎない合っているのが集団だ。 突然、まわりの連中といることに意味を感じなくなり、あるいはうっとおしさまで感じるようになるのには、2つの原因が考えられる。 あなたが、まわりのみんなより少し早く成長してしまったか。 あるいは、まわりのみんながあなたより少し早く成長してしまったか・・・のいずれかだ。 残念ながら人間の成長速度は一律ではない。 共通の思い出がある・・・というだけでは、人をつなぎとめることはできない。 同じ方向に変わっていけることが、長くつきあう唯一の方法。 「唐人」と呼ばれたお吉の変わり方は、幸福ではなかったけれど・・・男と女の間もそうじゃない?
参考資料:「今日は何の日」PHP研究所=刊
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