三島由紀夫を鮮烈な自決は、
昭和史に残る一大事件として
日本人の心に深く刻まれた。
松田優作の死は
決して自殺ではないし、
生きようとする必死な思い…
そして、ハリウッドに賭けた夢の続きは、
ガンの告知を受けた後に
英会話学校への入学手続きをしていたこと
…にも見られる。
しかし…
ガン治療を中断してまで映画出演を選んだ
…という点において、
生命尊重より魂を選んだといっていい。
命を削ってまで働くことに何の意味があるのか?
そう考える人は多いだろうし、
とくに女性はそう考えるのではないか。
そこに男と女の大きな違いを感じるのは、
私だけではないたろう。
男と女の大きな違い…
それは端的に言えば、
子供を産めるか、産めないか
…というところに行き着く。
子供を産むことができる女性は、
子供を産んだ時点において、
すでに今生における大きな役割を果たしている。
何よりも子供を育てることができる
「今」という環境が最重要課題であり、
個人的な夢こそ持つが、
歴史を変えようという野心を持つ者は
…まず少ないのではないか。
一方、子供を産めない男性は、
たとえ自分に子供ができても
自分が生きた証を追求して止まない。
故に世界中に建つ銅像を見れば、
圧倒的に男性が多いと思わないか?
むろん、銅像を建てたのは本人ではないだろう。
偉人が成し得たことは、
やがて世の常識として溶け込んでしまい…
その名は忘れ去られるのが常。
名を忘れずにいたい、
あるいは忘れないようにする
…ということに執着するのは、
銅像の発起人を含めて、
やっぱり男性ではないのか?
ディズニーランドに対し、
フロリダに作られた2番目のテーマパークが、
ウォルト・ディズニー・ワールド
…という名称になったのは、
開演を前にした亡くなったディズニーの兄が、
弟の名を遺したくて、そうしたと読んだことがある。
名を遺す…
その思いは時に
「生きる」という本能さえ超越してしまう。
これは、もはや…
いい、とか、悪い、とか、
考え方がどうの、という次元の問題ではなく
…そういうものだと解釈するしかないだろう。
少なくとも…男にはそういう部分がある。
だから「特攻隊」になれたのだ。
9.11以降…
自爆テロという言葉が
頻繁に使われるようになったが、
「特攻隊」を自爆テロと言う人は、まずいない。
テロリズムが一般市民を巻き込むのに対し、
特攻隊は兵隊しか標的にしない。
強いて言うなら東京大空襲の方が、
よほどテロリズムに近いのではないか。
こうした歴史も…
いい、とか、悪い、とか、
考え方がどうの、という次元の問題ではなく
…そういうことが、かつて事実としてあったのだ。
【敬称略】
─三島由紀夫と松田優作〈つづく〉
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