Episode No.995(20011102):コンプレックスは長所?
どんなに口数の多い人にも
言葉が話せない赤ん坊の頃があったのと同じように・・・
どんなに成功をおさめた人にも不遇の時代はある。
ただし・・・
不遇の時代が必ずしも不幸の時代だったかと言えば、そうでもない。
ジョージ・ルーカスの元妻が
「成功するまでが一番楽しかった」と言って、
押しも押されもせぬ大成功者ルーカスの元を離れていった例もあるし・・・
金がない若い時代の方が、今よりずっと楽しかったと語る成功者も少なくない。
最も、そういうことは、成功したからこそ言えるんだと思うけどね。
さて・・・
阿川泰子と言えば、ジャズ・シンガーとして知られるが
かつては女優で「ウルトラマン・レオ」にも出てたということを知る人も多いだろう。
もともと女優志願の阿川泰子は、若い頃、文学座演劇研究所の研究生だった。
その時の同期生が故・松田優作だというのも有名な話。
お姫様役をやるのを夢みて、オーディションをかけずりまわる日々。
顔立ちは、ごらんの通り、女優になってもおかしくないほど整ってはいるが
念願のお姫様役は、ちっともまわってこない。
ある日、オーディションの審査員に若き阿川はキッパリと、こう言われた。
「あんた顔はいいけど、声がダメ。
あんたの声は夜の声。まるでジャズ・シンガーのようだ」
決定的に自分の夢をうち砕かれた阿川が呆然としていると・・・
たまたま、そこに居合わせたのがジャズに強い音楽会社。
「いっそ、本格的にジャズを歌ってみては?」
どうせ夢が叶わないのなら、どうにでもなれ・・・と飛び込んだジャズの世界。
その後の成功は知っての通りだ。
自分がなりたいものと、向いているものは違う。
なりたいものに向かって努力することはリッパだが・・・
それでも、どうしたってなれないものはある。
場合によっちゃ、自分が思い描いていたなりたいものの世界なんて
本当はなかったりもするし。
だけど・・・人間、必ずひとつくらいは取り柄があって
その方向で頑張れば、成功の糸口はきっとつかめるはずだ。
むしろ、なりたいものには・・・何かで成功してからだってなれるんじゃないかな。
阿川泰子は、自分が一番コンプレックスを感じているものを利用して
みこどにジャズの歌姫となった。
よく「コンプレックスをバネに・・・」なんて言い方があるけど
バネどころか直接、武器にしてしまうのも手かも知れない。
自分が一番気になる部分っていうのは
一番他人とは違う部分なんだから・・・
ひょっとすると・・・磨けば一番輝きやすい部分、なのかもよ。