Episode No.423(000104):感性だけでは完成できない
やっと観たよ・・・『タイタニック』。
お正月用にと中古ビデオを買ってきていたモノで。
確かに劇場で観たら、もの凄い迫力だったろうな・・・。
私の身近では、わりと年輩で劇場に足を運んだ人が多くて、聞くと一様に「よかった」と言っていた。
・・・若い女性だけでなく、年輩の人たちにウケがイイのも何かわかる気がしたな。
だって、この物語って101歳のお婆さんの青春の想い出だもの・・・ね。
ラヴ・ストーリーとしてはハッキリ言って定番の感じがしないでもないけれど、それを史実とあわせて実に映画的に見せていると思う。
もちろん、時代劇を現代の最新テクノロジーで忠実に再現した・・・という画期的な試みもある。
ラヴ・ストーリー+時代劇+ノンフィクション性・・・これは、まさにアカデミー賞のツボを押さえた作品だ。
昨日は「技術だけあってもダメ」みたいな話をしたけれど、今日はまた逆説的な話をしてみようと思う。
つまり「感性だけでもダメ」・・・という。
若い頃には、自分は天才じゃないかと錯覚する時が必ずある。
まわりの友達と比べて、ほんの少しでも秀でたモノを持っているとね。
何か自分はこのままイケるんじゃないか・・・何て思いこんだりして。
それは別に悪いコトじゃないんだけれど、もちろんそのままイケるほど人生は甘くない。
問題は、初めて蛙が井戸を跳びだした時に起こる。
もっと跳べるようになるか? それとも、そのまま干からびていくか?
人間というのは考える生き物だけど、実際は考えることによってダメになるケースも多い。
つまり自分に都合のイイように考える・・・これは防衛本能なんだけどね。
天才ジャズ・トランペッターにしてシンガーのルイ・アームストロング。
恵まれぬ境遇に育ちながらも、近所の家でたまたまその赤ん坊に歌った子守歌を聞いたオトナたちは「この子はただ者ではない」と察した。
15歳にして地元では知らぬ者はいないほどのミュージシャンとなったが、やがて彼は蒸気船に乗り故郷を離れる。
蒸気船で演奏するバンドの一員となってからも頭角を現すが・・・その時、彼はまだ楽譜を読めなかった。
彼の名が国中に響き渡るようになったのは、そこで必死に楽譜の勉強をした後の話だ。
少なくとも感性だけで成り立つ商売など、この世には存在しない。
誰でも興味を引く『タイタニック』の物語をああいった作品に仕上げたのは、海洋学者をめざしたコトもあるという脚本監督ジェームス・キャメロンの情熱と『ターミネーター』で認めさせた技術にほかならない。
それでも天才を信じるなら、山にでもこもって自給自足の暮らしでもするしか・・・ないな。