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15歳の時、初めて手に入れた車は、フィアットで最も小型のビアンキーナ。

「えらく小さな車でね、あんなんで何ができたと思う? スクーターみたいなもんだったよ」

それでも彼は毎日、放課後になるとパーツショップに入り浸り、愛車の改造に熱中した。

彼が愛したのはカーレースのスリル、そして夜になれば音楽とセックスがすべて。小柄でやせっぽち、しかもシャイだった彼もひとたび愛車のハンドルを握れば、いっぱしの"男"になっていた。

二輪走行でカーブを曲がる荒技を楽しんでいた彼が、ついに事故を起こしたのは6月のうだるように暑い日のこと。オーブントップのフィアットは木の葉のように宙を舞い、その無惨な残骸は地元紙の一面を飾った。奇跡的にも彼が命拾いをできたのは、レース規格にしていた頑丈なシートベルトが根こそぎもげたためだった。

「あんな経験をして自分が生きていることには何か理由があるはずだ、と思わずにはいられなくなった。僕はその理由を見極めたいと思った」

以後、彼はカーレースをする代わりに、それをフィルムに納めることに興味を見い出してくことになる。

彼の姉は語る。
「あんなにちゃらんぽらんだったジョージが、シッカリしたということに、ただただ驚いています」

彼、ジョージ・ルーカスの名を世間に知らしめた最初のヒット作は、50年代の若者たちの日常を新鮮なタッチで描いた傑作『アメリカン・グラフィティ』。

その成功を受けて制作が開始されたのが『スターウォーズ』である。


参考文献:「ジョージ・ルーカス」Dele Pollock=著 光山昌男=訳 学研=刊

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