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Episode No.692(20001114):器用貧乏からの脱出

昔、知り合いに・・・「ギターの腕なら誰にも負けない」と言い切る男がいた。

実際、奴のギターの腕はものすごくて・・・
一流の演奏家ともセッションをしていたし・・・
確かスタジオ・ミュージシャンみたいなコトもやってたんじゃないかな。

「こいつは俺にないモノを持ってる」・・・と、よく思ったものだ。
器用貧乏な私としてはね。

私には「これだけは」と言い切れるモノがない。
だから、そう言い切れるモノを持っている人を見ると「強い人だな」と関心してしまう。

いい歳をして、こんな状態では・・・と、しばしば思うんだけれど
それでも人並みの暮らしをして、家族にも経済的な面で不自由をかけないで済むのは・・・
専門家にない柔軟な発想と、それを買ってくれるクライアントがいるおかげだと思う。

私が学校という場所を苦手としているコトは何度が書いたが・・・
厳密に言えば「カタにはめられる」のがイヤなんだと思う。

「カタにはめられる」のは誰だってイヤだろうけれど・・・
本当は「カタにはめられる」方が、はるかに楽だという気もする。

ただ「カタにはめられる」のはイヤだとタダをこねているだけでは・・・
一人前の人間として生きていくコトはできない。

「カタにはめられる」のがイヤなら、自分のアイデアをカタチにして提案できるコトと・・・
提案した内容が相手に受け入れられるコトが必要不可欠だ。

柔軟な発想を武器に発明王と言われたエジソンが、正規の教育を受けていなかったのは有名な話。

エジソン自身「カタにはめた学校教育が諸悪の根元」と言い切っている。
学校嫌いの私には嬉しいけれど・・・これは何も勉強が必要ではない、と言っているワケではない。

いかに柔軟な発想やアイデアとは言っても・・・何もないところからは生まれない。
むしろ専門がない分、分野を越えたさまざまな知識がないと・・・絶対にいいアイデアは生まれて来ない。

だから「カタにはめられる」のはイヤな人は・・・
カタにはめられて生きる人以上に勉強をしなければ、決して裕福にはなれない。

エジソンは、ひとつの発明品を完成させるまでに平均7年間の時間をかけた。
その分野が多岐にわたっているのは周知の通り。
いくつもの研究開発を同時に進行させたからこそ、エジソンは発明王でいられたんだと思う。

大きな工場や会社もたくさん持ったが・・・次々と先行投資をするために決して裕福ではなかったらしい。
ただし、やりたいコトができるだけの資金は有していた。

若くて、まだ知識が少ない時には、あるひとつのジャンルに集中して挑戦を繰り返すコトも必要だと思う。
しかし、正直いって30代後半となると・・・そういう時間のかけ方をするのは、とても困難だ。

まぁ、いろいろとやり方はあるかも知れないが・・・
私の場合、やれそうなコトは片っ端からやってみるコトにしている。

「やりたい」とか「できそうだ」と思っているのは私個人の「思い」であって・・・
やったコトが特定の相手や、広くは今の世の中に受け入れられるかどうかは、まったく別問題。

何が受け入れてもらえるのかが、出してみるまでわからない以上・・・片っ端からやってみるしかない。
そこまでやってみて、やらせてもらえそうな突破口を開くしか・・・ないだろうな。

実際・・・仕事というのは「できる」か「できないか」というのと同時に・・・
「やらせてもらえるか」という部分が大きいしね。
やらせてもらえなければ、いくらできたって・・・金にはならない。

そして、その仕事が自分に合っているかどうかは・・・やらせてもらった後で考えればいいコトだとも思う。
仕事として続けられるものか、どうかはね。

ギターの名手である知人が、実際の仕事を通して何を感じたのか、詳しいコトはわからないが・・・
彼は今、ギターとはまったく関係のない仕事に就いている。


参考資料:「快人エジソン」浜田和幸=著 日本経済新聞社=刊ほか