つくられる歴史
〜お吉にされた美少女-その4
The history is made artificially 04.
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今週も早くも後半…。
このまま話をふくらませていくと、
いつになってもタイトルにある
「お吉にされた美少女」の話が出てこないので、
今日は頭からこの話に入ろう、…やっとだけど。
さて「唐人お吉」を画像検索すると、
無数の写真が出てくる。
その多くは、以前ここにも載せた
19才の頃のお吉とされる上の写真。
ウィキペディアでも
facebookでも「斎藤きち」と検索すれば、
この写真が表示される。
しかし、結論から言うと…
この少女は「唐人お吉」こと「斎藤きち」とは、
残念ながら、まったくの別人。
お吉の菩提寺である下田・宝福寺の
お吉記念館にも、この写真は
19才の頃のお吉として飾られているため、
今なお、この少女は「お吉」として
観光案内のポスターや
関連書籍の表紙にもなり続けているが…、
ちょっと調べてみると、
これがお吉であり得ないことが、すぐわかる。
19才のお吉写真の根拠は、
横浜で下岡蓮杖から写真を学んだ
水野半兵衛が所持していたから…とされるが、
1841年生まれのお吉が19才の時といえば、
桜田門外の変が起きた1860年のはず…。
前年の1859年に横浜は開港していたけれど、
まだ下岡蓮杖が横浜に写真館を開く前だから、
…とうていあり得ない話だ。
NHK大河ドラマ「八重の桜」人気に便乗して 先頃出版された「歴史REAL女たちの幕末・明治」を
たまたま立ち読みしていたら…そこに最近見慣れた顔が。
19才のお吉じゃないか…!
これは19才のお吉と言われた少女の
別カットの写真に違いない。
幕末美女の写真はほかにもたくさんあるが、
この少女には、ほかに見られない特長がある。
幕末の女性は日本髪を結っている。
この娘も一応、日本髪なのだが、見ての通り真ん中分け。
この中央を分けた日本髪は、
明治に入ってからの新しい日本髪のカタチらしい。
…ということで、
そこからも撮影されたのは明治以降、
早くても1870年代以降であることが推察できる。
その頃、まだお吉本人は
鶴松と暮らしている頃で元気だったが、
19才ではなく、少なくとも、もう10年は年をとってるはず。
19才という年齢だけが間違っていて、
ひょっとしてこれは
お吉が29才の時の写真…?
いくら日本人が幼く見えるといっても、
…さすがにそれはないだろう。三十路の既婚者だからね。
「歴史REAL女たちの幕末・明治」に掲載されていた
別カットの少女の写真は
長崎大学付属図書館が管理していて、
撮影された年月まではハッキリしないものの、
撮影者が日本人でないことはわかっている。
その異人写真家の来日時期から考えても、
お吉でないことだけは間違いないのだ。
さらに後日、本屋をブラついていると
「歴史探偵 2013年 4/25号 」という雑誌が目に入った。
何気に手に取ると、ここにも
「古写真に見る美人百花100年前の恋人に出会う」
…と題されたグラビア企画が掲載されている。
これも「八重の桜」便乗企画だろう。
…で、そのページを見て見ると、
またまた真ん中分けの少女を発見!
ネットを掘ってみると…あった、あった。
今度の写真は眠っているが、
どうやら場所は「歴史REAL女たちの幕末・明治」に
掲載されていたのと同じだ。
火鉢もあるし、火鉢の前の盆もある。
三味線もあるし、手にしていた絵草紙も枕のわきにある。
着物の色画違うのは手彩色のせいだろう。
羽織を着ているのも同じだ。
この時代の写真にしては、
別な出どころから3枚も同じ女性の写真が見つかるなんて、
案外珍しいことじゃないだろうか?
かなりの人気モデルだったに違いない。
また、同じように見える19才のお吉写真も、
よく見ると異なるバージョンがあることに気づく。
当時はもちろんカラー写真などないから、
彩色写真でいろんな色のパターンが出回るのはわかるが…
左の写真は、右の写真にはある
派手やかなかんざしなどが削除修正され、
いかにも質素で純朴な少女に見えるよう、
演出されているように見える。
これは、もう、この写真を
可哀想なお吉ということにしたかった
…としか考えられない。
下岡蓮杖の弟子が
売れ筋のモデルさんの写真を持っていただけ
…と考えても、商売柄、何ら不思議はないのに…。
下岡蓮杖の弟子が持ってた。
…が、
下岡蓮杖の弟子が撮影した。
…となり、
下岡蓮杖の弟子が撮影した、あのお吉。
…と考えたかった人たちが盛り上げてしまった話だろう。
それじゃあいったい
このお吉にされた美少女は誰なんだ…?
やっと本題に入ったところで…つづきは、こちら。
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