そもそも、シェイクスピアやアンデルセンは、
何故、俳優を目指したのか?
自分が俳優に向いているという錯覚もあっただろうが、
それを家族に納得させた一番の要因は
…貧困にある。
つまり、俳優になって一旗揚げ、
大儲けしてやろう…というわけ。
何の元手もない田舎の若者が、
身ひとつで大金を得るためには芸人の道しかない
…そう考えたのだ。
シェイクスピアが俳優になるべく家を出たのは
20歳頃だと言われている。
この頃、すでにシェイクスピアには
8歳も年上の女房と3人の子供がいた。
最初の子供は結婚の6ヶ月後に生まれたというから、
今て言う「できちゃった婚」である。
この姉さん女房が結構キツい人で、
そこから逃れたい一心もあって、
都に出なければできない俳優という職業を選んだ
…という説もある。
10代後半の…
今で言えば高校生くらいの男の子を
たぶらかしてしまう20代後半の女だからね。
…確かにキツかったに違いない。
一方、アンデルセンが
俳優を目指して都に出たのは14歳の頃。
アンデルセンの父親は
彼が11歳の時に病死している。
それから2年して母親が再婚し、
アンデルセンは
自宅に自分の居場所がないことを感じはじめていた。
幸いまだまだ子供たったアンデルセンを
たぶらかそうという女はいなかった。
…が、結局アンデルセンは、
その後、何度か恋に落ちるが生涯独身で過ごすことになる。
結局のところ…
シェイクスピアもアンデルセンも
自分が安堵できる居場所を求めていたことは確かで、
家を出る理由として、
大儲けできる俳優になるには都に出るしかない
…と家族を納得させていたのだ。
こうした自分や家族に対する
理由づけのプロセスを見ると
…現代の若者たちと何ら変わりはない。
人生は居場所探しで、
夢は…
これまで自分が
自分の居場所だと信じていた場所が
何らかの理由でそうでなくなりつつある時に、
防衛本能のひとつとして
より大きくなってくるものなんだろう、ね。
崩れかかったバランスを保つための
手段の一つが…夢を描くことかもしれない。
しかし…夢は、しょせん夢。
そのものズバリをつかむことが本当の幸せではなく、
自分の知らない夢の向こう側を知るチャンスは与えてくれる。
本当の幸せ…
達成感を得る舞台や成功は、思いもよらないところにあるものだ。
【敬称略】
─明日につづく。
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