Episode No.1143(20020424):自分に邪魔されない

この間、DVDを買って見直したばかりだと言うのに・・・
深夜テレビでやっていた『ロッキー2』を、つい観てしまった。

無名のボクサー、ロッキーが自力で這い上がっていく姿が
無名の俳優だったスタローンとオーバーラップするのはもちろんだが・・・
脇を固める俳優陣が、またいい。

ひと口で言えば・・・
みんな「そういう人」に見える。

それが実力派俳優たちの証でもある。

ヒロイン、エイドリアンの兄を演じたバート・ヤングは・・・
ロッキー』のシナリオを読んで出演を心に決めていた。
・・・が、ギャラが安いことを理由に
事務所が自分に相談もないまま、この話を断ったことを知り、こんな抗議をした。

「確かに低予算で
 有名人など出ちゃいない映画だが
 ひょっとしたら・・・
 この映画が俺の代表作になるかも知れないぜ」

その予想はみごとに的中。

そんなバート・ヤングが
はじめてシナリオを手にした時、心がけていることがある。
それは・・・
"自分に邪魔されない"こと。

自分という存在について考えない人はいないだろう。
しかし、いくら考えてもつかめないのが・・・自分。

つかもうと思えば、本当はつかめる。
右手で左手を、あるいは頭を、顔を、足を・・・
まわりから見える自分というのは、つまり
自分の肉体でしかない。

肉体としての自分は・・・
疲れたら眠たくなるし、腹が減れば何か食べたくなる。
肉体を維持するために、無理を避け、できるだけ楽であろうとする。
それが自分の正体。

普通なら、たいてい誰でもそんな風になってしまうのに・・・
そんな自分を殺してまで何かをやり遂げた人を見て
・・・人は感動を覚える。『ロッキー』もそうだ。

自分を磨くとは、自分を捨てることだと、つい先日も書いた。

「自分なり」じゃあ、世間は思うように渡っていけない。
だって・・・
世間は自分のために動いてくれてるわけじゃないからねぇ。

確固たる「自分」の行動もないクセに
「自分なり」に、なんて言ってるうちは、まだ素人。
人生の素人なんだと思う。


参考資料:「ロッキー」製作25周年記念DVDコレクターズBOX