Episode No.1172(20020528):言われてからじゃ作れない
「モノ作りって、能動態の作業なんですね」
沖縄の観光案内番組でのこと・・・
女優、秋吉久美子が粘土をこねてシーサーを作りながら、
淡々と語っていた。
テレビが茶の間を独占しはじめた時、
評論家、大宅壮一は「一億総白痴化」という言葉で世間をハッとさせた。
テレビで、もの作りをする人の姿を見て
大宅荘一の言葉を思い出すなんてのも・・・少々、皮肉だが。
まず、生きること。
これが、生命をうけたものの第一のミッション。
でも、生きるために何かをするだけなら・・・
蟻だってやっている。
せっかく人間に生まれてきて何をするか?
そこにモノ作りの衝動がある。
ただ、そうやって・・・
人間であること、あるいは自分であることにこだわり過ぎて
つい周囲を見失い、
結果、蟻にもできることができなくなってしまうこともある。
やりたいことが、できない理由・・・
やりたいことをやり過ぎて、通常の生活がおくれない理由・・・
できない理由を「その人の生き方」と言ってしまうのは
何とも安直過ぎないか?
できない理由を
「別にそうしようとは思わなかった」という人もあるけれど・・・
できる人がやらなかったなら理解されるが
できない人がそう言っても・・・何の説得力もない。
ゲーテの比喩する
「砂漠のインド人は、魚を食わないことを誓う」に等しい様。
金を持った人間が、買い物をしなかったのは
気に入ったものが見つからなかっただろうけど・・・
金を持たない人間は、何を考えようと、まず買い物はできないんだ。
生き方を語るには力がいる。
・・・金だけじゃないけど、ね。
そして・・・
力は能動態でいる人間にしか得られないものだと思うな。