Episode No.812(20010403):考えるだけなら誰にもできる

ゲーテ格言集』を最初に買ったのは中学2、3年の頃だった。

本屋で、ふと目にしたその本をパラパラとめくると・・・
「試練は年齢ととみに高まる」
・・・という一文を見つけ、ガーンと来て買った。

恐らく初めての受験といういう試練を前に・・・
いろいろと考えるコトがあったんだろうね。

今持っている『ゲーテ格言集』は3冊目だ。

最初の1冊は高校の時に、席が近かった女の子にあげてしまった。
別ら好きだったとか、というワケではない。
その時、彼女は付き合っている彼氏も同じクラスにいたし・・・
その彼氏とも私は比較的、仲が良かった。

確か、授業中に私が『ゲーテ格言集』を読んでいたところ・・・
彼女が興味を示して、そのままあげてしまったんだと思う。

彼女がとくに注目したのは、こんな言葉だ。

「愛人の欠点を美徳と思えないほどの者は愛しているとは言えない」

そして・・・
ほどなくして彼女は彼氏と別れてしまった。

そういうコトも目の当たりにしていたので・・・
私は結婚する時「こいつの欠点なら我慢できる」と思える相手を選んだ。
とりあえず、ここ10年は何とかなってる。

2冊目の『ゲーテ格言集』は、うちの愚かな弟にやった。
奴にしてみれば、たいていの言葉にはガーンときたとこだろう。

ただ、あんまり何でもガーンと来すぎると、かえって慣れてしまったせいか・・・
今のところ、まだその成果は見えていないけど。

ドイツにあるゲーテの生家に、かつて一度だけ足を踏み入れたことがある。
ゲーテが生まれた時に親戚の時計職人から贈られたという大きな置き時計が元気に動いていた。

ゲーテの父親は法律家で、二階には蔵書で埋め尽くされた書斎があった。
若き日のゲーテは父親の目を盗んでは深夜の街に繰り出していたそうで・・・
二階の書斎からは、玄関が死角になって見えない。

当時からドイツには都市計画とか街の景観には厳しい規制が敷かれていて・・・
隣の家に向かった方向に窓はつけられない規則になっていた。

隣に向かった窓さえあれば、夜中に出ていく息子を監視できる。
そう考えたゲーテの父親は、法律を改正して窓を作ったという逸話が残っている。

そんな話を聞いて、ますますゲーテに惹かれたんだけど・・・
最近、また格言を読みたくなった。

今はこんな言葉にガーンときてる。

「いかにして人は自分自身を知ることができるか。
 考察によっては決して知り得ないが、行動によってはおそらく知り得よう。
 君の義務をはたそうと試みよ。
 そうすれば、ただちにどんな能力がそなわっているかが君にわかる」


参考資料:「ゲーテ格言集」高橋健二=編訳 新潮文庫=刊 ほか