Episode No.1146(20020427):たかがデザイン、されどデザイン

世の中には、すごい人がたくさんいるね。

たまたま見たNHKのドキュメンタリー・・・
紹介されていたのは、インダストリアルデザイナー、川崎和男。

工業デザイナーというのは
例えば、家電製品とか、眼鏡とか、車とか・・・
道具デザインを手がけるのが仕事。

川崎和男という人は・・・
美術大学を出て、家電メーカーに入社し
その後、フリーとなり
家電にとどまらず、ありとあらゆるモノのデザインを手がけ
現在は、名古屋市立大学芸術工学部大学院芸術工学に研究室を持つ。

かつては、Apple社の外部デザイン顧問もしていたらしいし
グッドデザイン賞・・・
いわゆるGマーク認定の審査委員長もしている。

・・・と聞くと
順風満帆な人生のような感じがするが、実はそうではない。

28歳の時、交通事故に遭い、半身不随に。

手術後、自分の肉体に埋め込まれた
鉄板とボルトをレントゲンで見て・・・
「デザインがカッコ悪い」と言って医者とケンカをした。

事故後は一時期、郷里に戻るが・・・
そこで、まず手がけたのが、車椅子のデザイン。

使い心地が良くて、軽くて、しかもカッコいい車椅子は
日本のみならず、世界中から評価を得て
ニューヨーク近代美術館に20世紀のデザインとして収蔵された。

医療分野には、まだまだ機能優先で
カッコ悪いモノが多い・・・

そこで、ついには人工心臓のデザインまで手がけ
医学博士号まで取得してしまった。

もちろん、本業はデザイナーだから
実際のモノ作りは、それぞれの技術者に任せるわけだが
「こういうモノを作りたい」という最初の発想は
デザインからアプローチできる。
技術者は、そのデザインの中に
いかにして機能を組み込めるのかが仕事となる。

今、手がけているのは・・・
ペースメーカーのように常に身につけることができる
小児ぜんそく用の測定器。

「身につけていて、
 あわれな気持ちになるようなモノではダメ。
 健康な子供たちが見ても
 カッコいい、つけてみたい・・・
 と思われるようなモノじゃないとね」

どんな分野の仕事でも・・・
人に必要とされなければ成り立たないし
どれくらい役に立つのかが
どれくらい優れた仕事か、ということ
・・・なんだ、な。


参考資料:NHK教育「ETV2002〜ニッポンの”独創者”たち」2002年4月25日放送