Episode No.1091(20020222):理想を他人に求めるなかれ

私が尊敬する実業家、小林一三
評論家をこう評した・・・

「その批判は正鵠を得ている。
 併しこれは万人に通じるものとはいえない。
 絶対的立場に於いては真理であるかも知れぬが、
 相対的な立場に於いては
 決して正しいとはいえないのである」

自分なりの価値観を持つことは大切だし
それがなければ自分なりの人生を歩むことはできない。

だけど・・・
現実社会に生きることは
良かれ悪しかれ、他人との比較のうえで
価値観が見いだされ、
そのおかげで商売も成り立っている。

小林一三は、もとは小説家を目指していて
初期の宝塚歌劇団では
戯曲まで書いていた芸術肌を持つ人。

芸術的な理想や批評家の意見も充分に理解したと思うが
同時に現実的な商売の厳しさも知っていた。

絶対的な理想や立場
自らに向ける徹であって・・・
大衆に求めるものではない。

大衆はつねに相対的な考え方で
物を選ぶのだ。

自分が消費者の一人になって買い物をする時、
必ず似た製品の中からほしい物を選ぶのが何よりの証拠。
真剣に物を売ろうとする時だって・・・
従来品と比較して、どこが優れているのかを
アピールするのが常套手段。

だから・・・
大衆に絶対的に理想を語るまではいいが
実践を促しても意味がない。

本当は意味がないとわかっていても・・・
それを求めて自分の方がわかってるふりをするのは
単なる自分への慰めに過ぎないんだな。

大衆・・・と言うと
何だか大げさな感じもするけど
つまりは・・・自分以外の人すべて。

真理を語るだけで人を先導しようというのは
宗教家のやること。

それで税金のかかならい団体が作れるのなら
大したモンだとは思うけど、ね。


参考資料:「小林一三/経営語録」中内功=編 ダイヤモンド社=刊