Episode No.997(20011105):正しい生き方

自分で商売をやっていると・・・
世の中、正しいから勝てるなんてモンじゃないんだな
と、いう場面によくブチ当たる。

最も、これは商売に限ったことじゃないだろう。
どだい「正しさ」なんてモノは・・・立場によって違うモンだしね。

大村益次郎、という名前に聞き覚えあるでしょ?
何をやった人かは忘れちゃってる人も多いと思うけど・・・
あのオデコの広いインパクトのある肖像は、何となく記憶にあるんじゃないかな?

近代陸軍の創始者として知られる大村益次郎は、もともと医者を志していた。
蘭学を学ぶ中で、兵学にも興味を覚え・・・
長州藩の軍事指導者として戊辰戦争で腕をふるうことになる。

維新後・・・
新しい国家に見合った、新しい兵制を推進するために力をそそぐ。

ところが・・・
そのため、武士の特権を守ろうとする旧守派に怨みを買うことになってしまう。

旧守派の怨みが爆発したのは、明治2=1869年9月4日。
大村益二郎は、京都三条の宿でくつろいでいるところを暴漢に襲われる。

一命はとりとめたものの・・・
頭部とヒザに重傷を負い、大阪の病院で死の淵をさまようこと半年以上。

今から132年前の今日、11月5日
敗血症を起こして、この世を去った。

瀕死の益二郎を治療し続けたのは・・・
益二郎が医学修行をしていた当時の恩師、緒方洪庵。

弟子を救えなかった洪庵は、無念の思いとともに・・・
「医者になっておれば、よかったものを」と思ったんじゃないかな。

坂本龍馬J・F・ケネディの暗殺もそうだけど・・・
改革の象徴たる人物を殺したところで、新しい時代が来るのを止めることはできない。

時代は波だからね・・・
一カ所くらいせき止めたって・・・流れを阻止することはできやしない。

ただ・・・正しくても命を失ってしまった人間は・・・
ある意味、時代のいけにえだよなぁ。

時代を変えるほどの大きな商売をやっていない私の場合は
絶対にコケるわけには、いかないし・・・

やっぱり商売をやっている以上は・・・名より実をとれ、かな。


参考資料:「歴史の意外なネタ366日」中江克己=著 PHP文庫=刊