Episode No.1073(20020201:借金ができて一人前?!

サラリーマンの息子だった友人と
商売人の息子である私の間で・・・
ことあるごとに、こんな話が飛びだしてくる。

「普通のサラリーマン家庭にとって
 銀行は金を預けに行くところだが・・・
 商売をやっているうちにとっては
 金を借りに行くところだ」

堅実にコツコツと稼いでいる人たちにとって・・・
人から金を借りることは、
まるで悪いことのように思えるらしい。

借金をしてもいいのは、
せいぜい住宅ローンくらいで・・・
金を借りなければできないことは
やってはいけないこと・・・
のように思っている人も少なくないだろう。

確かに、無理矢理、個人から金を借りるのよくない
・・・と私も思う。
しかし・・・
相手が金貸し、それが商売となれば話は別だ。

営利を目的とする銀行だろうと、
営利を目的としない国民生活金融公庫だろうと
窓口に立つ人たちにとっては・・・
利息がメシの種であることにかわりはない。
だから、借りてもらわないとメシが食えない。

とはいえ、返せない相手に貸すことはできないから
無条件には貸してくれない。

借金の条件をクリアして借金をすることは
言い方をかえると・・・
世間にどれくらい認めてもらえるか、ということにもなる。

自前の資金だけで、すべてがまかなえれば
それはそれでいいことかも知れないが・・・
世間、社会はもちつ、もたれつ
そういう付き合いもこなせないと
かえって疑いの目で見られることも少なくないし
しょせん、その程度の事業・・・とも思われがちだ。

「もちろん貯金は最善の方法であろうけれども
 金を儲けるという側からすれば、
 すこぶる消極的な話でものたらないと感ずるであろう。
 私は金を儲ける秘訣は
 借金をなすに一番よい時を選ぶことが
 もっとも必要なことであろうと思う」

敬愛する小林一三のこんな言葉に励まされつつ・・・
積極的に生きてみよう・・・か。

瞬発力だと思っていたレベルを持久力に高めるのと同じで
少し無理して背伸びするくらいが・・・ちょうどいい。
もちろん、続かなければ意味ないけど。
現状のままでいい、なんて言ってたら・・・
きっと下がってゆくばかり。

親子ともに商売人をしている我が家では・・・
借金ができて一人前・・・という風潮が、ないではない。

そういう意味では・・・私もかなり一人前になってしまった。


参考資料:「小林一三/経営語録」中内功=編 ダイヤモンド社=刊