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Episode No.162(990304):モノが価値観を変える

モノが売れない時代だと言われて久しい・・・が・・・あなたは真剣にそう思ってますか?
秋葉原には人があふれ、大型ディスカウントストアの前では土日の度に渋滞に悩まされる今。

よく「消費者のニーズに応えた」というフレーズが広告などに使われる。
しかし、ヒット商品の実体は決してそうではない。

消費者のニーズを知るために市場調査して、ほしい物を尋ねまくる。
それでヒット商品ができるのなら、ヒットしない商品など世の中に存在しないだろう。

本田宗一郎は、こう言い切る。

「消費者は評論家なんだ。評論家っていうのは、目の前に出されたモノについてはとやかく言うが、決してモノは作れない。モノを作れない人にモノの作り方を聞いても無駄さ。モノを作り出すのは俺たちの仕事だよ」

ウチの中を見まわたせば、テレビ、電話、冷蔵庫、洗濯機、クーラー・・・と、たいていこれくらいは学生のアパートにだってそろっている。

今は、どれひとつなくても困るモノばかりだが、はたして、これら現代人の"生活必需品"は、最初から"必需品"だったのだろうか?

東芝が、昭和30年に販売を開始した"電気釜"は、今では立派な"生活必需品"。

初回販売量500台からスタートし、翌年には月産10万台。そして、販売開始10年を待たずして、なんと全国50%の家庭に行き渡ったというケタはずれのヒット商品だ。

"電気釜"を考案したのは、当時、家庭電気課に所属していた山田正吾という、ひとりの男。

苦労の末、ようやく自分が納得のいく"電気釜"を完成させた彼が、会社に販売のおうかがいを立てに行った時、最初に言われたのは以下のようなセリフだった。

「寝ている間にメシを炊こうなんて、そんなだらしない女のことを我が社が考える必要はない!」


参考資料:「本田宗一郎・一日一話」PHP研究所=編 PHP文庫=刊
     「昭和・平成家庭史年表」下川耿史/家庭総合研究会=編 河出書房新社=刊

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