Episode No.1065(20020123):食えない肩書きなど必要ない

彼の誕生日は、今から219年前の・・・1783年1月23日。
出生地は、南フランスのグルノーブル。

17歳で、ナポレオンのイタリア遠征軍に参加。
いろいろあって・・・
48歳で、ローマの外港チビタベッキアの領事に就任。

59歳で死ぬまで、肩書きは領事。
パリミラノ、ローマなどの社交界に姿を現しては
数え切れないほどの浮き名を流した。

そんな男が、なぜ後世に知られているのか・・・?

領事時代に趣味半分で書いた作品が残っているからだ。
作品のタイトルは『赤と黒』、『パルムの僧院』など。

男の名は・・・スタンダールだ。

いつの時代にも、芸術で食えている人なんていないんだね。
芸術家として王宮に雇われていた人はいたけれど・・・
今で言えば、美大の大学教授の境遇に近いんじゃないかな。

画家や作家、作曲家として作品を売って食べている人は
売るためのエンターテイメント性を常に心がけていて
決して独りよがりな作品を作りっぱなしというわけではないし。

芸術家というより、ニーズに応える職人的な腕がないと・・・
とても食ってはいけないだろう。

真の芸術家でいたければ・・・アマチュアでいることかもね。

見た目はどうあれ・・・
本当に好きな道で食っている人なんか、いないんじゃないかな。
自分で決めた道を好きになるべく
頑張っている人は大勢いると思うけど。

自分の思う通りにいかないからって
すぐにあきらめていたんじゃ・・・
仕事どころか、恋愛だって成就しない。

ちなみに・・・
数々の恋愛経験をしたスタンダールの作品が
世の中に認められたのは、彼の死後の話。

つまり生前のスタンダールには
小説家という肩書きはなかった。


参考資料:「歴史の意外なネタ366日」中江克己=著 PHP文庫=刊