Episode No.998(20011106):信ずべきものを騙すな

昔、赤塚不二夫の「天才バカボン」に、こんな話があった。

パパの後輩がやって来る・・・もちろんバカ田大学の学生だ。
その後輩は、何か大ウソをついて世間をアッと言わせたいと思っているんだけど・・・
なかなか思うように世間が反応してくれない。

なぜなら・・・
その後輩は、自分でついているウソに、自分が真っ先に騙されてしまうのだ。

「オオカミが来るぞ〜」と怒鳴っておいて
「えっ? オオカミが来るのか。逃げなきゃ!」・・・といった具合。

そこでバカボンのパパは、後輩に名案を授ける。

自分が喋らなくても、世間をうまくだませるよう
後輩の体中にマジックで点々を描いて・・・天然痘だと思わせる。

おかげで、後輩は期待通り世間を驚かすことができるんだけど・・・
ふと、気がつくと・・・熱っぽい。

最後は自分の体が自分のウソに騙されて・・・
ホンモノの天然痘になって死んじゃう、というのがオチ。

ナンセンスなギャグ漫画だけど
よくよく考えてみると・・・怖い話だよね。

何と自分の都合から出た言い訳に騙されて生きている人間の多いことか・・・!

「ウソも誠心誠意つけば真実になる」

・・・と言って
あたかも何かあるように思わせて、宿敵・吉田茂の内閣を倒したのは
自民党を創りだした男、三木武吉だけど・・・

自分の信じる正義のためについたウソなら歴史にも残るが・・・
自分の気楽さを守るためについたウソは・・・やがて自分を滅ぼしかねない。

中には、もう長い間それをやり続けて・・・
今さら後戻りはできないし、新しいことを考える柔軟性もないような人たちがいる。

そういう人たちは・・・
バカ田大学の後輩じゃないけど、最後は体の方が持たなくなっちゃう。

自分は騙せても・・・世間は都合よく騙されてはくれないし
気持ちは騙せても・・・体がついて来れない。

「こんなはずじゃなかった・・・」と言う人の多くは、自分に騙された証拠。
まわりのみんなは・・・「やっぱりね」と思ってる。

自分を疑っては何も進まないけれど・・・
自分に騙されたら、何もカタチにできなくなっちゃうんだよ、ね。

「自分はこれでいいんだ」・・・本当に、そう?


参考資料:「歴史の意外なネタ366日」中江克己=著 PHP文庫=刊