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Episode No.098:勝海舟夫人の遺言

結婚が女性にとって"自分の生活を捨てること"になるのだとしたら、確かに不幸だ。

亭主関白という言葉も久しく耳にしなくなったが、まだまだ男性中心の社会の中で、女性が育児と仕事とを両立することは、現実的には難しい面が多い。

それ故、必然的に金を稼ぐのは男の仕事。家庭を守るのは女性の仕事になる。

外勤と内勤がいて、はじめて組織は機能する・・・と前に書いたが、普通の会社組織を見ても外勤に比べて内勤は仕事をサボることが難しい。反して外勤は喫茶店にこもったり、時には仕事と称して飲み歩いたりすることもできる。

余談だが、このサボるという言葉は、もともとフランス語の"サボタージュ"が語源。"サボ"とは木靴を意味し、"サボタージュ"は木靴職人。その昔、木靴職人には、なまけ者が多かったために、こう言われるようになったという説が有力だ。

話を戻そう。互いのストレスを秤にかけて、どっちが重いとは言い難いし、仮にそれを数値的にはかることができたところで簡単に立場が入れ替わるわけでもない。

外勤は歩き回る必要がない内勤を楽だと思い、内勤は好き勝手に歩き回れる外勤をうらやましく思っている。

しかし、概して外から金を取ってくる外勤の方が、金をやりくりして組織を支えている内勤より、いばっている場合が多いようだ。

"耐え忍ぶこと"が女性の美徳とされていた時代にあっては、なおさらのこと。

色を好んだ英雄は、幕末だけとってみても伊藤博文だけではない。幕臣でありながら維新の立役者のひとりとなった勝海舟も、相当なモノだったらしい。

海軍伝習のために単身赴任した長崎に"長崎妻"を持ったのをかわきりに、妻以外の女性に産ませた子供も片手では数えられない。

そうした夫の乱交に、ひたすら耐え忍んだ妻、民子は海舟の死後6年後に、次のように言葉を残して、この世を去ったという。

「間違っても勝のそばに埋めてくださいますな」


参考資料:「ことばの豆知識」さくら銀行=編 三笠書房=刊
     「日本人物史 女たちの物語<下>」加来耕三・馬場千枝=著 講談社+α文庫=刊

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