Episode No.991(20011029):憐れみの地
江戸郊外に中野村と呼ばれる場所があった。
現在の中野区・・・新宿区の隣にある区だ。
そこに今からちょうど314年前の今日、1687年10月29日、
16万坪もの広大な敷地を使い・・・
20万両の工費をかけて、あるモノが完成した。
犬小屋である。
子がないのは前世の折衝の報い・・・
そんな僧侶の言葉を信じて「生類憐れみの令」を出した
通称、犬公方・・・五代将軍綱吉が建てさせたものだ。
「生類憐れみの令」が出されたのは、その年の1月28日。
四谷、大久保に次いで建てられたのが最大級の中野犬小屋だった。
一両は現在の貨幣価値に直すと・・・
4万円とも8万円とも、あるいは6万円くらいとも言われている。
ずいぶん幅があるけど・・・
それについて書かれた本が出た年によってまちまちなのが現状。
デフレ時代には、また大きく変わっているかも知れない。
まぁ、仮に最低線の一両4万円だとしても・・・
総工費20万両ということは、80億円ということになるから驚きだ。
余談だけど、80億円というと・・・
確か・・・映画「ゴースト・バスターズ」の制作費とだいたい一緒だな。
そういや、つい最近のニュースによると・・・
マイケル・ジャクソンが新曲のビデオ・クリップに32億円もかけたってね。
日本映画の場合は・・・
あの黒澤で1本20億円、大作と言われる作品で10億円・・・普通は5億円程度か。
もちろん、金をかけたからイイものができるとは限らないけど・・・
採算がとれる企画だと認められて、金が集まるんだから・・・やっぱりスゴイ。
「生類憐れみの令」の場合は・・・採算など関係ない天下の悪法。
多少は雇用の促進をうながしたかも知れないけど
その法に裁かれて切腹や島流しをくらった人までいたのだから・・・
とってつけたような博覧会や道路整備より、はるかにタチが悪い。
実を言うと私は・・・
小学校を卒業するまで、中野区に住んでいた。
小学校の社会科では、自分たちの住んでいる地域を学習するので
中野区がどんなカタチをしているのかは、ハッキリわかる。
見ようによっては・・・犬のカタチをしてるんだよね。
広大な犬小屋のあった場所は・・・
後年、あの小野田さんも学んだという陸軍中野学校になった。
今も、その名残で少し離れた場所に警察学校が建っている。
陸軍中野学校の跡地には・・・中野サンプラザホールが建っている。
山手線から、少し離れているとは言え・・・中野もすっかり都会。
でも・・・
練馬との区界じゃあ、セミどころか
ザリガニも採れたんだぜ・・・30年前の話だけど。