Episode No.987(20011024):知ることの不安

「最近、仕事を真面目にやっていない人がよく目につく」
・・・と言う奴がいた。

それはね、自分が真面目にやるようになったから、わかることなんだよ。

「街を歩いてても、子供連れが多いのにビックリした」
・・・と言う奴もいた。

それはね、自分に子供ができたから子連れが気になるようになったんだよ。

「このところ、まわりに体調の悪い人が増えた」
・・・まるで何か新しい病気が蔓延しはじめてるみたいに言う人もいる。

それはね、自分もまわりも年をとったってことなんだよ。

発明や発見が、実は自然界に最初からあるものに
人間が気づいただけなのと一緒で・・・

自分が最近気づいたことも、本当は昔からずっとそこに存在している。
逆を言えば・・・
最近気づいたことは、最近まで気づかなかっただけのこと、なんだな。

まわりの連中が真面目にやっていないのも・・・
急に子供の数が多く見えるのも・・・
年をとって体調が崩れやすくなっていくのも・・・

それはみんな
自分やその周囲だけを襲った天変地異でも何でもなくて
最初からある自然の流れ。

自分だけが特別なことに見舞われていると思いたい・・・
そう思えれば逃げだしたって、誰も責めなし、場合によっちゃ同情してくれる。
だけど・・・
長い人間の歴史や広い視野から見れば、決してそんなことはない。
ごくごく自然の流れの中にいるだけのこと。

不安を語り合える仲間がいることは幸いだが、
不安を分析したところで、不安がなくなるわけではない。

「不安なときは、自分がしなければならないことに集中せよ。
 徹底的に準備ができれば、不安はなくなる」・・・デール・カーネギー

自分にとって特別な存在は、つねに自分。

特別な自分を特別視せずに、突き放して・・・
自分が他人に望むことと同じ内容を自分に課すことができたら
・・・相当、強くなれるな。


参考資料:「20世紀を創り出した言葉」ペギー・アンダーソン=編 弓場 隆=訳 ディスカヴァー21=刊