Episode No.890(20010703):夢追い人の形

先日、買った『孫子の兵法入門』という本に、こんなことが書かれていた。

「およそ客たるの道は深ければ専(もっぱら)にし、浅ければ散ず」

何だか難しい言い回しだけど・・・
遠くから来た者の心理を孫子が読んだもので
意図するところを超訳すると・・・勝つためには

「地形に適した戦法をとれ」・・・ということになるらしい。

自分がやろうとしていることが、なかなか受け入れてもらえないと・・・
ついつい周囲の人たちや、世間を恨んでしまったりする。

でも、うまくいかない原因が自分の外にあると思っているうちは・・・
絶対にうまくいきっこないんだよね。

インターネットを通じて、大勢の夢を追う人たちに出逢うことができた。
どんな夢を追う人たちかというと・・・
何かモノを書いて大成したい人たちや
役者として大成したい人たちが多いんだけど・・・

客観的に見ると・・・
モノ書きを目指す人に比べて役者の人たちの方が・・・断然、明るい。

私も含めて、そういう傾向はあると思うんだけど・・・
モノ書き目指す人たちって、どこか斜に構えて冷めたところがある。

最もそういう部分があるから「観察結果」を文章にしたりできるんだと思うし
そんな中でも「今にみてろよ」と静かに燃えてる人はいっぱいいると思うんだけど。

この「今にみてろよ」という「今に」が、いつなのか漠然とし過ぎてる場合も少なくない。

一方、役者の人たちにとっての「今」は、本当に「今」しかない。
大器晩成ということはあるにせよ・・・
とくに舞台役者の場合には「死んでから認められる」ということはないのだから
「今」見てもらえなければ意味がない。

そういう開き直って全身で「今」とぶつかる強さが、
明るさにつながっているのかも知れない・・・と、ふと思ったりする。

今から118年前の1883年7月3日。
チェコの古都プラハのユダヤ商人に子供が生まれた。

フランツと名づけられた、その子は40歳の若さで亡くなるまで
人間の存在の不条理に悩み続けた。

代表作は『変身』、『審判』・・・フランツ・カフカである。

第2次大戦後になって、世界中にブームを巻き起こしたカフカだが・・・
著書のほとんどは死後になって刊行されたもの。

カフカいわく・・・「書くことは祈りの形式である」

2年前にも同じ言葉を紹介したけど・・・
はたしてカフカは、何のために祈りを捧げたんだろうか?


参考資料:「孫子の兵法入門」高畠穣=著 日本文芸社=刊
     「今日は何の日」PHP研究所=刊