Episode No.832(20010426):日々の仕事を追い越せ!

が好きな方なら、ひょっとしたらごらんになったコトがあるかも知れないが・・・

山城隆一さんという、イラストレーターが猫の絵をたくさん描いている。

いつもと違って、何故「さん」付けにしているのかと言うと・・・
私は、かつてこの人に一度だけお目にかかったコトがあるのだ。

もう、20年近く前の話になるけれど・・・
私が広告業界に進むらしいという話を聞きつけた父の友人が・・・
「それなら、うちの近所にデザイナーがいるから、話でも聞きに行ってみるか」
と、私を誘ってくれた。

そのデザイナーというのが・・・山城隆一さんだった。

確かに本業はグラフィック・デザイナー。
私もこの業界に入って知ったコトだけど・・・
デザイナーには見た目、物静かな感じの人が多い。

山城さんは年輩の優しい感じの方で・・・やっぱり、物静かな印象があった。

今の私なら、突っ込んだ話をいくらでも聞くところだけど・・・
当時の私は広告業界のコトなど、何も知らないただの学生。

残念なことに、いったいどんなお話をうかがったのか・・・
あまりよく覚えていない。

ただ、シッカリ覚えているのは・・・
すでに当時から山城さんが趣味で描きはじめていた猫の絵は有名で
ちょうど訪ねて行った日にも、
なんと郵政省から「切手に使いたい」という申し出があって打ち合わせをした直後だったという。

そんな話を聞いて
広告みたいなクリエイティブな仕事をしていれば・・・
いつかは自分の表現ができるのでは、なんて漠然と思ったけど・・・とんでもない!

日々の仕事に追われているだけでは・・・結局、自分がやりたいコトなど何もできない。
日々の仕事を追い越して、その上に何かやるエネルギーがないと・・・
とてもじゃないけど「やりたいこと」の「や」の字もできやしない。

山城さんにとっても、日々の依頼された仕事は大変だったに違いない。
でも、そのうえに猫の絵を描き続けた。

誰にも頼まれないでやっていたモノを買いにくる人が出てくると・・・
それは職人の仕事ではなく、芸術家の仕事になるのかも知れない。

残念ながら、山城さんは何年か前にお亡くなりになった。
たった一度しかお会いしたことのない私にまで
ご丁寧に奥様から、山城さんが亡くなったことを知らせる絵はがきをいただいた。

もちろん、その絵はがきには山城さんの猫の絵があった。

山城隆一さんの猫の絵は・・・ホームページで見ることもできる。
http://www.denshiro.com/cat/

これからも、ずっと残っていく仕事も・・・してみたいな。


参考資料:勇気の出る思い出