そろそろ梅雨入りのニュースが聞こえはじめてきた。
傘を持たずに外出したばっかりに、突然の雨で足止めをくらうのは何とも悔しいものだが、雨宿りをしていて運命の出逢いでもあれば・・・話は別。
と、言っても決して、さだまさしの歌の話をしようというのではない。
江戸時代の話。
東京・世田谷と言えば、高級住宅街があることで有名だが、江戸の昔にはタカ狩りができたというほど、うっそうとした荒れ地だった。
桜田門外の変で暗殺された大老、井伊直弼の先祖に井伊直孝という人物がいる。
直孝もまた徳川家の家来で、タカ狩りの趣味をもっていた。
ある日、世田谷へタカ狩りに出かけた直孝の一行は、突然の雨に見舞われて、近くにあった荒れ果てた寺の軒先で雨宿りをしていた。
すると、奥の方から一匹の猫が直孝の方をじっと見ている。
よく見ると猫は前足を片方だけ上げて、手招きしているようにも見える。
一行は猫が招くまま、寺の奥の方へ足を踏み入れた・・・その直後、天を裂くような音があたりにこだまする。
たった今、自分たちがいた寺の玄関先に雷が落ちたのだ。
この話が世間に伝わってできたのが、あの"招き猫"の置物。
決してラーメン屋の店先に飾るために作られたわけではない。
ちなみに直孝が猫に命を救われた荒れ果てた寺は、その後、立派な寺に生まれ変わって現存している。
世田谷・豪徳寺がそれである。
豪徳寺は井伊家の菩提寺となり、今も参道の脇には元祖"招き猫"を祭った墓があるという。