Episode No.595(20000724):見えない幸福、見えすぎる不幸 暑いね・・・今日は「河童」の日だけど。 河童に感謝する日じゃなくて・・・ある意味ではそうかも知れない。 7月24日は、芥川龍之介の命日にあたる「河童忌」だ。 作家の命日は、その作品名にちなんで呼び名が決められているモノも多い。 6月19日は「桜桃忌」=太宰治。 11月25日は「憂国忌」=三島由紀夫。 一方、2月25日の茂吉忌(斎藤茂吉)、4月2日の光太郎忌(高村光太郎)、7月9日の鴎外忌(森鴎外)、9月26日の八雲忌(小泉八雲)などは、ペネームのまま。 この違いは何だろうと思って見てみると・・・前者と後者をハッキリと分けるモノがある。 作品名にちなんだ命日の呼び名がつけられているのは・・・みんな若くした自殺した作家ばかり。 若くして・・・とあえて付け加えたのは72歳で自殺した三島の仲人、川端康成が入っていないから。 芥川は35歳、太宰は39歳・・・それも自分の誕生日に。 そして三島は45歳で自らの命を絶っている。 そう考えると、インパクトのある作品を世に残せたのはいいとしても・・・ その作品名で命日が呼ばれるコトは決して名誉なコトではないような気もしてしまう。 作家という職業は、普通の人には明確に見えづらい人間の一面を深く観察、追求し・・・ それを普通の人が読んでもわかる文章に起こすのが仕事。 作家に限らず、どんな職業でも・・・ 普通の人にはできない作業をやるコトでお金を得ているコトに違いはないけれど・・・。 「ただぼんやりとした不安」という言葉を残して逝った芥川のように・・・ 人間に対して見えすぎてしまうと、生きていく上では余分な悩みも大きくなってしまうのかも知れない。 芥川龍之介の残した作品はもちろん・・・ 芥川賞のおかげで、石川達三、井上靖、安部公房、松本清張、吉行淳之介、遠藤周作、石原慎太郎といった才能が世に出るコトができた。 芥川龍之介の作家活動は、24歳から死ぬまでの、わずか11年。 その間には結婚もし、3人の子供に対しては非常に子煩悩な面もあったようだが・・・ はたして自分や家族のための人生としては、充分だったかどうか。 やっぱり24歳の若さで夏目漱石に認められてしまったのが、早すぎたのかな。 その点だけ見れば・・・私は安心できるけどね。 何かをやろうと思ったら・・・ 安心していられる歳でも、ない。
参考資料:「今日は何の日」PHP研究所=刊 「21世紀こども人物館」小学館=刊 ほか
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