Episode No.284(990724):人生はマッチ箱 「人生は一箱のマッチ箱に似ている。重大に扱うのはばかばかしい。重大に扱わなければ危険である」 今から72年前。 1927年7月24日、この言葉を残した芥川龍之介は、神経衰弱のため自らの命を絶った。 享年35歳。 歴史に名を芸術家には、早死にする者が少なくない。 樋口一葉は24歳、三島由紀夫は45歳、夏目漱石は50歳、森鴎外は60歳・・・。 手塚治虫も石ノ森章太郎も60歳だった。 黒澤明は、結果的に長生きはしたが、やはり自殺未遂の経験者である。 自殺だったり病死だったり、理由はさまざまだが、いわゆる芸術家にはおよそ平均寿命というものからは遠い人が多いように思える。 それでも歴史に名を刻むことができるのは、年齢に関係なく作品を完成することができるからだろう。 だが、実業家の場合には、そうはいかない。 自己の内面を掘り下げて表現する芸術の世界とは違い、社会の流れと歩調を合わせて進めていかなければ、大きな仕事を成し得ることはできないからだ。 したがって、実業家として歴史に名を刻むためには長生きをする必要がある。 本田宗一郎は85歳、ソニーの創業者として知られる井深大(まさる)は89歳、そして松下幸之助は95歳・・・。 芸術家でも実業家でもない、とうてい歴史に名を残すことなどできそうもない一般人の場合にだって、人として生まれてきたからには天寿をまっとうするだけの仕事は、きっと用意されている。 それは、ある会社である時期、ある作業を担うことであるかもしれないし、子供を育てあげ、次の世代につないでいくことかもしれない。 それを今は嫌なこと・・・と思っている人も中にはいるかもしれないが、この世に生まれて、今生きているということは否定できない事実。 寿命が長い短いは、地球の歴史から見れば、さしたる問題ではないが、人生というマッチ箱の中のマッチをいたずらに減らしていくか、何かに火をつけるために有意義に使うのかは、やはり本人次第・・・だな。
参考資料:「今日は何の日」PHP研究所=刊 「21世紀こども人物館」小学館=刊
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