Episode No.071:陰気者でいこう!
物書きには夜型が多い。
先日、亡くなった淀川さんも、昼頃起きて、午後から新作映画の試写を観て、深夜は原稿を書くという毎日をおくっていた。
ある日、そのことを知らない者が、朝9時に電話を入れたところ「私の生活では8時、9時は夜中なの」と、えらく怒られたという。
自分だけの世界に入り込み集中して仕事を進めるためには、訪ねてくる者もいない、電話もまず鳴ることのない深夜の方がいいというのは、原稿を書く仕事がある私にもわかる。
しかし、中には非常に健康的な作家もいた。
まるで銀行員のように、朝から午後3時までを執筆の時間にあて、どんなに締め切りが迫っていても決して徹夜をすることはなかっという有名な作家。
彼の高校時代の後輩で、元NHKアナウンサーの鈴木健二の証言によると、彼はいたって陽気な性格で、実に快活な男だったとう。
その名は、太宰 治。本名、津島修治。
ペンネームの由来は、フランス文学者の太宰施門の姓を借用したものとも、太宰府からとったものとも、同級生の名前を借りたものとも、はたまた虚無主義的な芸術運動であるダダイズムからとったものとも言われている。
没後50年になる今年になって、太宰の草稿やメモが見つかった。
それによると、あの有名な「生まれてすいません」などの言葉もメモに残され、それが執筆の流れによって出てきたものではなく、ある意味で計算された言葉であることが初めて判明したという。
ひょっとすると、愛人との入水自殺という最期も彼一流の演出によるものだったのかもしれない。
なお、今回見つかった太宰の草稿やメモは今日(11/18)から29日まで、東京・三鷹市芸術文化センター地下1階展示室で一般公開される。入場無料だそうだが、私は行けそうにない。 |