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Episode No.574(20000629):空の事情

塗り立て1トン! 乾いても400kg・・・って、ナ〜ンだ?

答えは、ジャンボジェット機の外側を塗るのに必要なペンキの量だ。
全長70mを超える巨大な機体だから無理もない話だが・・・。
この重量は、ジャンボが可能な最大離陸重量の、およそ1%にのぼる。

つまり、この塗装さえなかったら・・・。
400kg分の貨物を積み込んで収益を上げるコトもできれば・・・。
400kg分の燃料を積み込んで飛行可能距離を伸ばすコトもできる。

では、何故そんな可能性を捨ててまで、小錦2人分の塗料をつけて飛ぶのか?
最大の理由は「自社の
宣伝」のためである。
1970年代以降、ワイドボディの機体が登場して、
航空各社は広告スペースが増えたと認識した。

ほとんどの航空会社は胴体の真横・・・窓のあたりにチャートラインと呼ばれるラインを知れている。
これは「
飛行機は速い」ということをイメージしたデザインらしい。

ここで思い起こしてもらいたい。
確か、昔の飛行機は、このチャートラインから下は、銀色の胴体がムキ出しではなかったか?

客からは見えづらい腹の部分を塗らなかったのは、やはり塗料と重量節約のため。
だが、デザインにこだわる国・・・イタリアのアリタリア航空が初めて腹まで白く塗装をほどこしてから、現在では全部塗るのが常識となっている。
ちなみにアリタリアとは、翼を意味する「アリ」と「イタリア」をくっつけた造語だとか。

もちろん正反対に
合理性を追求する国もある。

銀色の機体の地肌をムキ出しにしたモノを航空機マニアの間では「ベアメタルカラー」と呼ぶらしい。
そのベアメタルを基調としたデザインを通している代表格が、アメリカン航空だ。

ところが厳密に言えば、このベアメタルも地肌ムキ出しというワケではない。
飛行中の空気との摩擦や熱で機体が劣化してしまうのを防ぐため、ベアメタルであっても薄い透明のポリウレタン系被膜を施している。

ただし、この被膜は薄いため、一般の塗料と比べるとかなり寿命が短い。
したがって、ベアメタルを採用している飛行機は、塗装された飛行機より、頻繁に塗り直しが必要になってしまう。

最近は、飛行機自体の性能が上がってきたり、胴体に複合材料が使われるようになって、塗装をしないとツギハギだらけでカッコ悪い・・・という理由もあって、全塗装が主流。

しかし、アメリカン航空ほど「ひと目でわかる」機体ではない。
もともと飛行機自体、カタチは似たり寄ったり・・・同型だったりするから。

さて、あなたが航空会社の社長だったら・・・見栄えをとるか? 性能をとるか?
どちらにしても・・・金はかかるけど、ね。
金のかけ方が、
価値観の違い・・・かな。


参考資料:「旅客機マニアの常識」徳光 康=著 イカロス出版=刊

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