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Episode No.270(990708):実業家の昼食

昼食は、いつもの安料理店。
メニューは、35セントのローストビーフとポテト。
それに店員へのチップが15セント・・・と決めていた。

生涯この習慣を崩さなかった・・・というのは、巨大財閥の祖、ジョン・ロックフェラーである。

彼が生まれたのは今からちょうど160年前の今日、1839年7月8日。
場所は、ニューヨーク州リッチフォード。

その地名とは裏腹に彼が生まれたのは貧しい行商人の家だった。

一店員から身を起こしたロックフェラーは、時代を読んで31歳の時にスタンダード・オイル・カンパニーを設立。
ピーク時には、アメリカの精油能力の90%以上を手中に収め、石油王の名をほしいままにした。

にもかかわらず、あいかわらず安上がりな昼食をとっていた彼のエピソードは、昔の苦労時代を忘れない実業家の美談として語り継がれているが・・・それだけでもないように思う。

所詮、人間が食べる量など決まっている。
素材に金をかけることはできても量は変わらない。

むしろ、こってりとした高い肉ばかり食べていては長生きはできない。
大食家は早死にし、質素な食事をする者は長生きするから、人間が一生に食べる量というものは、誰でもほぼ同じだ・・・という説もある。

そのうえ、ロックフェラーほどの人物であれば、仕事は相当ハードなものだったに違いない。

早く、しかも安く食べられる・・・という合理性を重んじていたのではないか・・・とも推察できる。

そういえば、ビル・ゲイツが以前来日した時、日本の某大手メーカーでミーティングがあって、昼食は何がいいかと聞かれたビル・ゲイツがハンバーガーと答えたおかげで、役員があわててファーストフードへ走った・・・という話を聞いたことがある。

バブルがはじけて首もまらわなくなった人や会社の多くは、必要以上の贅沢をしていたに違いない。
必要のない贅沢ではあっても、一度それに慣れてしまうと、そこから抜け出すのは容易ではない。

ことにそれが、自分の力で実現したことであれば、まだいいが、単なるあぶく銭であった場合には始末が悪い。
自分の金だと思ったら、そう無駄には使えないはず・・・と経費削減でハッパをかけられている人も少なくないだろう。

ジョン・ロックフェラーは、1937年に亡くなるまで質素な食事を続けた。
その成果かどうか・・・享年98歳。

ちなみに、東京大学の図書館は、ロックフェラーから寄贈されたものだそうだ。


参考資料:「今日は何の日」PHP研究所=刊
     「21世紀こども人物館」小学館=刊

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