Episode No.495:役に立つ知識
藤子・F・不二雄をはじめとして、石ノ森章太郎や赤塚不二夫などなど・・・。
日本の漫画界を作ってきた人たちが、神様、手塚治虫を慕って集まったと言えばご存知、トキワ荘。
NHKの連続ドラマでも藤子不二雄原作の『まんが道』や赤塚不二夫原作の『これでいいのだ』などで、当時の様子は幾度となく再現されているので、トキワ荘・・・と聞くだけでイメージがわく方も多いだろう。
実際のところ、手塚治虫は漫画家の卵たちが集まってきた頃には、すでにほかへ越してしまっていて・・・。
入れ替わりに手塚が敷金と机を残した部屋に藤子不二雄の2人が入居した。
当時ナンセンス漫画がまだ受け入れられず、たいした仕事がなかった赤塚不二夫は、すでに少女漫画で売れっ子となっていた石ノ森章太郎のアシスタントのような仕事をしている。
やがて『おそ松くん』や『天才バカボン』など数々のヒット作を生み出しギャグの神様と言われた赤塚は、
ずっと憧れていた漫画の神様が選考委員長をつとめる『手塚賞』と並んで、少年ジャンプの誌上に『赤塚賞』を設けるまでとなった。
タモリをも発掘したギャグの神様は、最近の若者を見て、こう言う。
「今の若い人たちが送ってくるストーリー漫画やギャグ漫画を見ると、みんな似てるのね、絵が。
これはね、漫画から漫画を勉強してるからそうなるんですよ。
それと同じで、テレビ観たってね、お笑い連中なんてみんな似たり寄ったりでしょ。
あれってお笑いからお笑いを学んでるからそうなるんですよ。
僕らは手塚治虫に"一流の映画を観ろ、一流の音楽を聴け、一流の本を読め
それで自分の世界を作っていけ、そうして描け"って言われてたからね。
だから個性があるんですよ。みんなそれぞれに、あの頃の漫画家は」
ある分野で新しいと言われるモノは・・・つまりその分野には存在しなかったモノだ。
その分野での仕事をマスターしていくためには、先輩の模倣するコトも確かに大切だとは思う。
しかし、模倣だけでカタチづくられたモノは、しょせんその分野において"残る仕事"にはならない。
そもそも現在の漫画の手法だって手塚治虫が映画の世界から持ってきたモノだし・・・。
そんなコトを考えていたら・・・。
先日、お忙しいスケジュールをぬって福田卓郎さんの観劇オフ会に顔を出されたコミックストーリー作家の剣名舞先生が、ふと口にしてらした言葉を思い出した。
「僕らは、どうしても仕事柄、同じような業種の人たちとばかり集まる傾向があるもので・・・。
こうしてネットを通じて、いろんな職業の方々とお会いして、話を聞くのか楽しみなんだよね」
やはり本物のプロの仕事は、小手先の勝負ではいかない。
みんながわかっているコトだけ知ってても情報とは言えないし、新しいアイデアに結びつけるコトはできないだろう。
自分の分野とは、ぜんぜん違う分野の知識こそが・・・本当は役に立つ知識なのかも知れない、な。