Episode No.3758(20100909):
思い出話シリーズ
04 初めての彼女と厄介な女たち 年上の女からひと夏の恋愛の手ほどきを受けた高校生の私は、学校が始まるとかなり積極的に女子へのアタックを開始した。 年上の女のことを忘れたわけではないが、会えない相手のことばかり考えていても仕方ないし、この技(?)をぜひ試してみたいという衝動にもかられていた。実に若さはバカさである。 高校1年の秋…クラスで合宿するような行事があって、テントで寝泊まりした。 そこで、たまたま私の隣に寝ていたのが同じクラスのN実だった。 何だかんだマセたことを言っていたが、本格的に異性と付き合ったのは彼女が最初だな。年上の女にはリードされてただけだし。学校帰りにNを家に送りながら、N実の家の近所にある公園によく行った。 付き合い始めた当初は、本当にこのままずっと一緒にいて結婚してしまうんじゃないかなんて子供じみた夢をみていたものだ。が、振り返ればそれもわずか一瞬…恋は幸せ、かつ残酷な悪気のない勘違いだよ。ことに未熟な恋は、ね。 共通の男友達で根性なしのHという奴がいて、私はしょっちゅうHに意見してた。 ま、結局はその後、Hも彼女にフラれて(私から見れば当然)…フッた本人からその話を電話で聞いたんだけど、かといって私がN実と付き合い始めることはなかった。 何か女の子が面倒くさくなっちゃったんだろうな。 同時に部活やら生徒会の活動に邁進することに、はるかにやりがいを感じるようになっていた。 中学の頃と同様に、映画を撮るとなると女子の力も必要なので、話のわかる女子たちとは仲良く付き合った。ずいぶん長電話もしたし、女子と2人きりで喫茶店や映画に行くことも少なくはなかった。ただ、それ以上の付き合いに発展することは、まずなかった。 下心がまったくなかったと言えば健康男子としては嘘になるけれど…下心があると映画は完成しない。それはまた、これから数年先に経験することになるんだけれども…ね。 それでも、そこは多感な年頃。 ひとりは高校は違うけど、中学の時の一級下のY恵。 自殺志願少女で、一緒になっていろいろ悩んだ覚えがある。 とうとう或る日飛び降りちゃって、命に別状はなかったものの腰を痛めて入院。毎日のように見舞いに行ってた。心配をかけて、それに応えてもらえるのを楽しみにしているような感じがした。家庭の事情とかあって淋しかったに違いない。 その娘が退院した頃にはクラスの厄介者と連むことになった。 K枝というアバズレ女(笑)。 最初は私と仲よくしてくれていた部活の顧問でもある担任の先生に頼まれたんだったかなぁ…K枝とも仲良くしてやってくれって。K枝は学校の中に仲間が少なかったのかな。学校に出てこないんだから当然といえば当然なんだけれども…。 普通の女子のような面倒くささはなかったが、違うところで大変な奴だった。 こうして思い返してみると、あんまり平凡な娘とは付き合ってないな。何が平凡なのかもわからないけれど。どちらかといえば問題を抱えている奴との付き合いが多い。 こっちもマセてたから、中学生らしい中学生や、高校生らしい高校生は子供に見えちゃってたのかもしれない。自分だって充分子供のクセにね。 K枝は見た目も行動も不良中の不良。爆発したみたいな黄色いカーリーヘアでね。金八先生に出てた三原順子(現・国会議員)みたいな感じ。あそこまで美人じゃなかったけどさ。 学校帰りにパブでバイトしてて、たまに学校に来るかと思えば咳止めのシロップをイッキ飲みしてラリっていたりして。煙草はメンソールのサムタイム。無免許なのに双子の妹の免許証で原付を乗り回してたな。 そういや、K枝の原付のケツに乗って走ってるのを、たまたま車で通りかかった先生に見つかって2人して校長室に呼び出されたことがあった。私は生徒会長に当選した直後だっただけに、ずいぶん絞られたけど、そのまま生徒会長になっちゃったんだから、今考えれば不思議だよ。学校側としては、あまりスキャンダルにしたくなかったのかもしれんな。 今でも覚えてるのは校長室の応接セットに2人で並んで座らされて、目撃した先生が作成した調書を校長に読み上げれられた時のこと。 「○○君と△△さんは2人乗りでラッタッターを走行させ…」 校長室を出ると、私があんまり縮こまっていたんで、K枝に「情けない」みたいなことを言われたな。だけどよ、次期生徒会長としてはマズイだろ…やっぱり。会長になれるかどうかってこと以前に停学にされるかどうかって瀬戸際だったんだからさ。 高2の終わり頃。K枝はずっと学校に来ていなかったため、出席日数が足りなくて進級できなくなってしまい、担任の骨折りでこのままの単位数で進級させてくれる高校へと転校することになってしまった。 一応、転入試験はあるらしく、試験の帰り道、K枝が生徒会室を訪ねてきた。 その時のK枝の姿は今でもハッキリ印象に残っている。 それから友だちを何人か呼んで、いつもの制服でも酒を売ってくれる店でウイスキーを買って、滅多に人が入ってこない裏山に入り込み、みんなで酒盛りをした。 私にとってK枝は、映画の『Pretty Woman』のような存在だったな。こっちはチャード・ギアみたいに立派な男じゃなかったけどさ。 風のたよりに、K枝は高校を卒業した後、給食のおばさんになったと聞いた。 このシリーズのバックナンバー このほかの思い出話シリーズ ■30年目の夏─「白い蹉跌」のこと ■実録トラブル体験談〜巨大組織との仁義なき戦い Copyright 1998-2010 digitake.com. All Rights Reserved. |