Episode No.3757(20100908):
思い出話シリーズ
03 ひと夏の恋 私が進学した地元の高校は、後に俳優の妻夫木 聡が卒業したことで一部で知られるようになったが、当時は新設校で私は三期生。ようやく学年がみんなそろった頃だったから、県立高校とはいえ入学試験も比較的楽だった。 何せ入学試験の日に試験官が「この教室で試験を受けた40数名のうち、残念ながら2〜3人は落ちます」と笑って言っていたくらいだからね。 高校時代の想い出については、ついこの間もたくさん書いたところだから、そちらを参照していただくことにして、今回のテーマは女子の話なので、恥ずかしながらそちらの話を書き進めよう。 小学校、中学校の女子の想い出話は、古すぎる話だし、何かあったわけでもないので結構気軽にできるが、高校くらいになってくると多少言葉を選ぶようになってしまう。 いよいよ恋愛…という感じがしてくる。 夏休みの間の一ヶ月くらい、英国の片田舎オックスフォードにホームステイをさせてもらったことがある。高校生を集めたツアーで、全国から集まってきたのは、わがままな自営業の子供たちばかり。 一応、引率の先生というのもいるのだが、子供たちの面倒はほとんど見ず、引率で行けばタダで海外旅行ができると考えているような人たちで、結局、子供たちの面倒を見ていたのは若い添乗員。ガイドというより兄貴的な存在の人で、旅行中、一緒に酒を呑んだこともあった。今じゃこんなことがバレたら大問題だろうな。おかげで途中立ち寄ったシャンゼリゼ通りの植え込みにゲロ吐いたりしたよ。まさに日本の恥。 そこで酒を勢いを借りて話しかけたのが同じ年のグラマーな娘だった。セクハラな発言をしたと思う。それで彼女は当然怒るわけだけれど、怒って一緒に来てたお姉ちゃんに私の話をしたんだな。 そのお姉ちゃんは当時、高校2年だったはずだが…今思い返してもずっと年上の女に思える。 M子姉ちゃんが妹のことで私に抗議をしてきたのかどうか…はハッキリ覚えていないけれど、とにかく話しかけられたんだと思う。 以来、何となく行動を共にするようになり、老夫婦でさえ腕を組んで歩いているオックスフォードの街並みの中で、自分たちも自然に腕を組んで歩くようになった。 年上の女は積極的なんだよ。 しかし、帰国すれば離ればなれになる運命…。 空港で別れた時には涙が出たね。 まるで、吉田拓郎の『となりの町のお嬢さん』だね。 私は空港から横浜の自宅へ真っ直ぐに帰ったが、彼女たちは都内で一泊してから山口に帰ることになっていた。 自宅に着いて、久々に日本食を食べて元気を取り戻した頃…都内のホテルにいる彼女から電話があった。 私が元気に応対すると、彼女は急に怒り出した。 言葉に詰まっていると…電話の向こうから突然、号泣が聞こえてきた。 年上の女の押し強さに圧倒されていた私は、初めて女性の弱さを知った気がした。 夏休みが終わって、私は何とか山口までM子に行けないかと画策し、親に内緒で計画を練ったけれど、あえなくバレて阻止されてしまった。 そんなことで、すぐにあきらめてしまう私も根性なしだったけれど、ね。 以来、32年…彼女との約束はいまだ果たされていない。 しかも旅先で出逢っていたというのに写真1枚残っていない。いつも腕組んでたから(^_^; 想い出は美しい想い出のままにしておいた方がいいのかもしれないけど…ちょっとだけ会ってみたい気もする(^^ゞ このシリーズのバックナンバー このほかの思い出話シリーズ ■30年目の夏─「白い蹉跌」のこと ■実録トラブル体験談〜巨大組織との仁義なき戦い Copyright 1998-2010 digitake.com. All Rights Reserved. |