Episode No.3737(20100816)
習慣を作る教育

昨日…8月15日は、
65回目の終戦記念日だった。

テレビでは、
この節目の終戦記念日に向けた特集が、
いくつも組まれていた。

もちろん私は戦争を体験してはいない。
何せ私が生まれた昭和30年代後半といえば、
戦後は終わったと言われていた頃なので。

しかし、この終戦特集には、
つい目を奪われてしまう。

それも、
見るべきである
…という義務感からではなく、
あたかも私の中の
DNAが共鳴しているように思えてならない。

戦時中、命を捨てて国を守ろうとした
若き兵士たちが、何故そう思えたのか?
それは家族を思う気持ちと共に
…戦時教育の賜だろう。

戦後生まれの私は当然、
そのような教育は受けていない
…が、はたと気づくことがある。

学校での勉強より、
はるかに影響を受けていた漫画やテレビ。
当時、それを作っていた人たちは、
みんな戦争を体験した人たちだったはずだ。

漫画の神様・手塚治虫は、
「鉄腕アトムは、戦後の混乱期に
 敗戦国民として受けた、さまざまな差別を
 人間とロボットに置き換えたパロディなんです」
…と自ら言っているし、
ウルトラマン・シリーズに登場する敵の中でも、
とくに宇宙人は他国人の置き換えにも思えてしまう。

最もウルトラマン・シリーズで有名な
脚本家の金城哲夫は沖縄の出身で、
琉球を支配しようとした本州の人間たちを
宇宙人に見立てていたそうだが…。

そして、
敵がすべて宇宙人だったウルトラセブンに至ってみると、
最終回でモロボシ ダンは、
今度変身して戦えば命に危険があると知りつつ、
同僚を救うために最後の戦いに挑んでゆく。

善し悪しは別として、
そういう精神が正しい…と、
少なくとも東京オリンピック前に生まれた連中には
強く刻み込まれているのではないだろうか。

昔、大学に通っていた頃、
中山千夏さんと
当時「話の特集」の編集長だった矢崎泰久さんが
学園祭で座談会をした。

その中で矢崎さんは、
昭和天皇にインタビューを申し込み続けていて、
ずっと断られ続けていたけど、
やがて申し込みを辞めたという話をした。

その理由は、
どうせ断られるから辞めたのではなく、
もしインタビューが実現したとしても、
戦時中の教育を受けた自分は、
昭和天皇の前で固まって
何も話せなくなるに違いないと悟ったからだ
…と言う。

結局、人というやつは
理屈で動いているわけじゃない。
人を動かしているのは…習慣なんだ。

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