「雨にけふる 神島を見て 紀伊の国の 生みし南方 熊楠を思う」
南方熊楠(みなかた くまぐす)と言えば、動物、植物、天文学から歴史まで、幅広い知識を有し、実に18カ国語を話せたという明治の生んだ大学者。
この和歌は、そんな熊楠との思い出を読んだもの。
読んだのは、誰あろう裕仁昭和天皇である。
昭和天皇の誕生日が"みどりの日"といわれるようになって、もう10年以上になるが、昭和天皇が生物学に深い興味を持っていたのは有名な話。
皇居の中には生物学研究所もあるという。
その昭和天皇が「同じ粘菌学者の仲間として」南方熊楠に会いたいと申し出たのは、今からちょうど70年前、1929年のことだった。
昭和天皇は軍艦"長門"で、熊楠が最も愛した植物の宝庫、瀬戸内海に浮かぶ神島を訪れ、その艦上で熊楠の講義を受けた。
この日のために、命がけで標本を集めた熊楠は、大きなキャラメルの箱に、それらを詰め込んで天皇に差し出した。
その飾り気のない人柄にいたく感動した昭和天皇が、熊楠の死後、神島の近くを訪れた際に読んだのが冒頭の和歌である。
ところで昭和天皇は、1901年生まれ。
ウォルト・ディズニーや円谷英二と同じ年の生まれである。
さて、このゴールデン・ウイークは、熊楠のように自然の中を歩き回ってみたいものだが・・・、仕事がまだ山のようにあるんだよなぁ・・・。