Episode No.3638(20100423)
憧れの道具たち〜その歴史を探る(5)

ついこの間まで、
痛いくらいに冷たい風も吹くことがあっけど…
ようやく暖かくなりつつあるね。

雨はうっとおしいけど、
もう凍えるほどでもない。

また暑い季節がやってくる。
アイスクリームが旨い季節だ。

その昔…
20世紀のはじめ頃までは、
アイスクリーム
なかなか一人分では買えない代物だった。

その理由は
今のような使い捨てのカップがなかったため。

この蝋引きの紙製カップは、
1908年に水を飲むためのカップとして
アメリカで発明されたもの。

ただし、売ろうとしていたのは、
このカップではなく…水だった。

禁酒法(1919-1933年)の時代が来る少し前、
酒に対する反発が強まる中、
反酒場同盟の支持を受けて発売されたのが、
この飲料水自動販売機。

発明者ヒュー・ムーアが
ついでに発明したのが、
使い捨てのカップ…というわけ。

しかし、酒の代わりに水を飲めばいい
…なんてことで、
飲料水自動販売機がヒットするはずもない。

ムーアの会社が潰れかかった時…
公衆衛生の役人によって、
公共の場で使われていたブリキのコップを
ムーアの紙コップに置き換える企画が舞い込む。

しかもムーアにとってラッキーだったのは、
心気症で、ブリキのコップで水を飲むことに
恐怖を感じていた大富豪の銀行家に出逢えたこと。

ムーアは巨額な資金を得て、
飲料水自動販売機会社を紙コップ会社に鞍替えする。

そして後に、
アイスクリーム会社から相談を受けることになった。

脇役が主役になる…なんて、
舞台版では脇役だった老刑事が
テレビ版で主役になった「刑事コロンボ」みたいな話

もっと拡大して考えてみると…

舞台俳優としてではなく、
映画界で歴史に名を遺したチャップリン

画家になりたかったけど
映画監督になって成功した黒澤明

自分が求めているものと、
時代が求めているものの間には、
ちょっとしたギャップがあって…
そのギャップを埋めた人が、
いわゆる成功者なのかも、ね。

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