Episode No.3404(20090724)
不真面目は売り物になるか?

…さりとて
芸術家と呼ばれる人間が、
凡人に比べて上等な人種であるかといえば
…それはまったく違う

むしろ逆の方が多いんじゃないか。

芸術作品に力はあっても
芸術家に人間力があるとは限らない。

世間一般で
「あいつは芸術家だから」
…と言えばたいていは皮肉で
変わり者、わがまま者を指す。

上等な人間というのは、
まず他人に迷惑をかけない者。
芸術家の多くは
他人のことなどお構いなく
好き勝手な振る舞いをするが、
反面、凡人には真似の出来ない
作品を創り上げたりする。

作品が先なのか…
ひょっとしたら、わがままが先で、
それを穴埋めしようと苦悩している
自称・芸術家も星の数ほどいるだろう。

宝くじでも当てない限り、
借金が返せないような人種だ、ね。

ノーベル文学賞をとるのは、
宝くじを当てるより難しいだろうが…

三島由紀夫の仲人を務めた川端康成
銀座界隈では財布ひとつ持たずに飲み歩き、
そのツケを
すべて出版社にまわしていたというし、ね。

もっとひどい奴になると…
熱海の旅館で金が尽き、
友人を宿代のカタに残して金を取りに帰るが
…いつまでたっても金は届けず終い。

見かねた宿の主人がその友人を解放して、
金を取りに戻った奴を探させてみると、
奴は別な友人とのんきに将棋を指していた。

旅館に残された友人が怒って詰め寄ると
静かにこう言ったと言う…

「待つ身が辛いかね? 待たせる身が辛いかね?」

そこで奴は着想した。
後に代表作のひとつとなる作品を。

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題名…「走れメロス」

奴の名は太宰治
旅館に残された友人は壇一雄で、
太宰と将棋を指していたのは
井伏鱒二だったという…嘘のような話。

参考文献「肉声 太宰治」山口智司=著 彩図社=刊


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