Episode No.820(20010412):死の商人の「死」

今からちょうど117年前の今日・・・1884年4月12日。
フランスの新聞にこんな見出しが踊った。

『死の商人・・・死す』

新聞が報じていたのは、ダイナマイトを発明して巨万の富を築いた
アルフレッド・ノーベルの死だった。

ところが・・・
実際にこの日に亡くなっていたのは、アルフレッド・ノーベルの兄ルードウィッヒ。
つまり、この報道は・・・まったくの誤報だった。

確かノーベルは弟をニトログリセリンを使った爆薬の実験中、事故で亡くしている。
その犠牲を無駄にしないと心に誓い・・・
より扱いやすい安全な爆薬を・・・とダイナマイトを発明した。

自分には、ずっとそんな思いがあったのに・・・

兄の死が自分の死と間違われ・・・
おまけに「死の商人」呼ばわりされたことに、落胆は隠せない。

そこで1896年・・・
「本当の」死の間際、遺言に遺したのが・・・後のノーベル賞設立だった。

自分が良かれと思ったことが、実は他人を傷つけてしまうことは・・・よくある。
価値観の違いは、たとえ夫婦だろうが、親子だろうが・・・あって当たり前。

ダメなら「ほれみろ」と言われるし・・・
うまくいけば妬まれ、時には中傷される。

じゃあ、違うから、面倒だから協調しなくていいか・・・と言えば、そうはいかない。
同じ時代、同じ社会に生きている人間同士としてね。

相手を認めさせるのは理屈や言動ではなく・・・やっぱり行動。

ノーベルと言えば、今は誰もがノーベル賞を思い浮かべるだろうけど・・・
何もしないで死んでいたら・・・死の商人として歴史に残ったかもしれない。

本当に自分の考えが正しいと考え、それを認めさせようと思ったら・・・
ブツブツ他人を批判しているヒマなど・・・ない。
証明して見せるのが一番てっとり早い。

人にわかってもらおうとは思わない・・・なんてハスに構えるくらいなら
山の中で自給自足の暮らしをするしかない。
少なくとも、あらゆる価値観の人たちが集う都会では・・・生きられないよ、ね。


参考資料:「歴史の意外なネタ366日」中江克己=著 PHP文庫=刊 ほか