Episode No.2864(20071025)
恐怖に麻薬

「武士道」と同じように・・・
最近、急激に発刊部数を伸ばしている古典が
・・・ほかにもある。

約130年前の文豪、
ドストエフスキーの作品群だ。

つい先頃・・・
何故今ドストエフスキーなのか
・・・という特集をNHK ETV特集で見た。

社会主義者であるが故、
投獄され、処刑直前までいった
ドストエフスキーは、
その投獄中に、さまざまな犯罪者と交流し、
人間の「善」と「悪」を見つることになった。

一見、礼儀正しく、
知識人でもある・・・殺人者や、
心優しい・・・詐欺師など・・・。

すべてが「善」の人間もいなければ、
すべてが「悪」の人間も、またいない。

ドストエフスキーの作品に描かれる犯罪者は、
そうした人間の内面を
深く、そしてリアルに掘り下げているという。

何故、人が悪行に手を染めてしまうのか・・・

その理由について、
ドストエフスキーを愛読し、
オウム事件も取材した
ドキュメンタリー作家、森達也さんが
・・・こんな内容のことを話していた。

力のある者が、
その力を使って犯罪を犯すということは
・・・あまりない。
むしろ、力の弱い者が、
攻撃されることを恐れるあまり、
自分では正当防衛のつもりで
・・・やってしまう。

まるで覚醒剤患者のような話だけど、
確かにそういうことは多いと思う。

一企業の偏った利益追求主義の方針や、
一国の偏った民族主義の主張が、
そこにいる多くの弱い立場の人たちに
覚醒剤を与えるが如く焚きつけて、
犯罪や戦争をあおっているようにも思う。

実際、ベトナム戦争では多くの兵士に
恐怖を和らげるための麻薬が与えられ、
それが今日、アメリカの麻薬犯罪につながっている
・・・というしね。

こうしたアンバランスな時代に
人間的なバランスを取りもどす必要性を感じて、
「武士道」やドストエフスキーといった
人間本来の姿を見つめ直す哲学が望まれているんだろう。

さて・・・読んでみるか・・・
ドストエフスキーの最高傑作といわれる
・・・新訳「カラマーゾフの兄弟」。
かなり長いっていう話だけど・・・。

参考「ETV特集・21世紀のドストエフスキー〜テロの時代を読み解く〜」NHK