Episode No.2862(20071023)
アンチテーゼ

「武士道とは死ぬことと見つけたり」
・・・という言葉は、
ルパン三世の石川五右衛門のセリフで
知った人も多いことだろう。

・・・しかし、このセリフは、
新渡戸稲造の「武士道」という本に
書かれているものではない。

「武士道」のひとつのルーツともいわれている
「葉隠」の最初の一文だ。

「葉隠」を書いたのは元佐賀藩士の山本常朝。
書かれたのは、徳川幕府が開かれてから
100年ほど経った頃で
・・・天下泰平の世の中。

武士が命がけで働く必要がなくなった、
そんな時代への問いかけとして書かれた
当時としては異端の書だったという。

「武士道とは死ぬことと見つけたり」
・・・というのはつまり、
自分を抑えてなお、大儀つき進む
プロフェッショナルの心得・・・だろう。

「武士道」が書かれた明治時代も
打ち寄せる近代化、欧米化の波の中で、
大和魂というアイデンティティを見直すため、
この書が影響力を持った。

一見豊かな時代というものは
特別なプロ意識を持たずに生活できる時代。

しかし・・・人はパンのみに生きず、で
それだけでは満たされないどころか
心に大きな穴をあけてしまうことになりかねない。

今、書店に行くと・・・
「武士道」関係の本が多いことに気づく。

21世紀の現代も・・・
「葉隠」や「武士道」が書かれた時代と
同じような迷いを
我々は切実に持っているのかもしれない。

参考文献「面白いほどよくわかる武士道」森 良之祐=著 日本文芸社=刊