Episode No.1250(20020827):コンプレックスに自信がもてるか?

コンプレックスをバネにするとは
・・・いったい、どういうことなんだろう?

三島由紀夫と交友が深かった石原慎太郎が
三島をはじめ、これまで出逢った人々の思い出を
『わが人生の時の人々』という一冊の本にまとめた。

石原慎太郎には『三島由紀夫の日蝕』という
哀惜の書もあるが・・・
『わが人生の時の人々』では
三島の自決をこう説明している。

「フェイクの肉体を
 比較的容易に作り上げてしまう
 手立てさえ手に入れなければ、
 氏は肉体という多分彼にとって
 対極的な遠さにあったものに行き会うこともなく、
 むしろ自分の抱えた肉体への劣等感をバネにして
 もっと隠微な徹底して美的なものを追求しつくし、
 未曾有の美意識の世界を構築したかも知れない」

虚弱な天才は・・・
文武両道の名のもとに
コンプレックスだらけの肉体を改造し
・・・そして果てた。

コンプレックスをなくした代償として
また、自虐的な何かを抱えてしまう。

三島由紀夫の場合、それが政治だった
・・・ということなのか?!

コンプレックスを克服する・・・というのは
コンプレックスをなくすことではないのかも知れない。

もちろん・・・
コンプレックスをなくすために努力するのは
大切なことだが
もし、今抱えるコンプレックスが
見た目のうえではなくなったとしても・・・
また、新たなコンプレックスが生まれる。

整形美人は見た目にはコンプレックスがなくなっても
整形したことが、ずっと心に止めて生きなければならない。

そういえば以前テレビで・・・
整形美人が念願の男をつかまえて
結婚したまではよかったが・・・
子供の頃の写真を見られることにビクビクしたり
生まれてきた子供がちっとも似てないんじゃないかと
悩んでいるというのをやってたな。

コンプレックスを消そうという努力は
・・・頑張る方向を間違えている場合も少なくない。

結局は・・・
同じキズを
人には見せられない後ろめたいものと考えるのか
名誉の負傷とさらすのか
・・・その差なんだろうな。

そして、その差が・・・
良くも悪くも、その人の人生を左右する。
まわりをとりまく時代や環境は
それに比べたら・・・二の次、三の次だな。


参考資料:「わが人生の時の人々」石原慎太郎=著 文藝春秋=刊