Episode No.1086(20020216):懸命にこいでいるか?

「こぎなさい 娘さん ブランコを
 こぎなさい 天まで高く
 地面を見てはいけないよ

 あなたが虹を探すのなら
 空を見上げなさい
 あなたが虹を探すのなら
 うつむいていては 見つからない

 人生はおそらく わびしいもの
 でも人生にも いろいろあるよ
 晴れの日もあれば
 雨の日もある

 ごぎなさい 娘さん ブランコを
 こぎなさい 天まで高く
 地面を見てはいけないよ

 あなたが虹を探すのなら
 空を見上げなさい
 決して 決して
 うつむいてばかりいては いけないよ」

この歌を作詞、作曲・・・そして歌っているのは
かの喜劇王、チャールズ・チャップリン
『サーカス』のテーマ曲だ。

『サーカス』がサイレント映画として作られたのは
今から74年前の1928年・・・チャップリン、当時38歳。

最初の公開から40年後の1968年に・・・
チャップリン自ら音楽をつけ直し、
この歌は、オープニング・・・
空中ブランコを練習する少女のバックに流されている。

自ら綱渡りのスタントをするために
2年がかりで撮りあげた作品は・・・
音楽まで入れると、42年がかりで創られたことになる。

チャップリンが音楽まで手がけていたのは有名な話。
中でも『モダンタイムス』のテーマ「スマイル」や・・・
『ライムライト』のテーマは誰でも耳にしたことがあるだろう。

チャップリンの歌声と言えば・・・
初めてその声を聴かせた『モダンタイムス』の中での
ティティナという半ばトーキーをおちょくったデタラメな歌や
ライムライト』でも劇中に歌う場面がいくつかある。

しかし・・・
登場する役とは関係のない、
いうなれば真面目な歌としては・・・
この『サーカス』が唯一かも知れない。

『サーカス』という作品は
『街の灯』と同じく、私が最も好きな映画。

『街の灯』や『モダンタイムス』の哀愁も
すべては『サーカス』が原点にあると言っていいと思うし・・・
引いては『男はつらいよ寅さんの原点と言ってもいい。

ちなみに、この『サーカス』をはじめ・・・
その後も数多い名作を配給し続けているユナイテッド・アーチス社は
チャップリンをはじめ、当時、ハリウッドで活躍をしていた
俳優、監督たちが、作品の質を守るために設立した会社である。


参考資料:「サーカス」製作・脚本・監督・主演・音楽=チャールズ・チャップリン